ル・ブランからシャルダンまで!レンヌ美術館で辿るフランス古典主義とロココ美術の華

レンヌ美術館 フランス古典主義とロココ美術の華 パリから日帰り旅行
記事内に広告が含まれています。

フランス北西部の歴史ある都市、レンヌ。この街の中心に位置するレンヌ美術館は、驚くほど充実したコレクションを誇る、美術愛好家必見の隠れた名所です。特に、フランス古典主義からロココ様式へと続く17世紀から18世紀のフランス絵画コレクションは、この美術館の最大の魅力の一つと言えるでしょう。

この記事では、レンヌ美術館が誇るコレクションの中から、ルイ14世時代の絶対王政を象徴するシャルル・ル・ブランの作品から、ロココ様式の優美さを極めたシャルダン、そして素朴な美しさを描いたナトワールまで、珠玉の傑作を厳選してご紹介します。華やかな宮廷文化が生み出した美術の世界を、一緒に旅してみませんか?

Sponsored Links

Charles Le Brun (1619-1690)

シャルル・ル・ブランは、17世紀フランスの画家、美術理論家です。ルイ14世の宮廷で絶大な権力を持ち、「アカデミー・ロワイヤル・ド・プサン・ド・ルッソ」の設立に尽力し、フランス古典主義を確立しました。

彼は、幼い頃から絵画の才能を見せ、シモン・ヴーエに師事しました。その後、1642年から1646年までローマに滞在し、ニコラ・プッサンから古典主義の厳格な様式と古代美術の知識を学びました。

帰国後、彼はマザラン枢機卿や、後の財務総監ジャン=バティスト・コルベールに才能を認められ、ルイ14世の宮廷画家となります。彼は「王立絵画彫刻アカデミー」の院長として、フランス美術の方向性を決定づけ、古典主義をフランスの公式な様式としました。

ル・ブランは、ヴェルサイユ宮殿の「鏡の間」の天井画や、ルーヴル宮殿の「アポロンのギャラリー」の装飾など、フランスの国家的な装飾プロジェクトを多数手掛けました。

Descente de Croix

Descente de Croix (1679)

Descente de Croix (十字架降下)は、イエス・キリストが十字架から降ろされる場面を描いたものです。画面には、キリストの遺体を抱え、悲嘆に暮れる聖母マリアやマグダラのマリア、そして十字架から遺体を降ろす人々が描かれています。

作品は彼の手掛けた中でも最も大きな作品の一つになります。

Sponsored Links

Noël Coypel (1628-1707)

ノエル・コワペルは、17世紀後半から18世紀初頭にかけてフランスで活躍した画家です。

彼は、ル・ブランの工房で学び、アカデミー・ロワイヤル・ド・プサン・ド・ルッソで教授を務めるなど、フランス美術界の中心人物として活躍しました。

彼の作風は、ル・ブランから継承した古典主義の厳格な構図とデッサンを基盤としつつ、より優雅で繊細な表現が特徴です。宗教画や神話画、肖像画など幅広いジャンルを手掛け、特に、ヴェルサイユ宮殿の装飾プロジェクトにも参加するなど、王室からの注文を多数受けました。

Loth et ses filles

Loth et ses filles (1704)

Loth et ses filles (ロトと娘たち)は、旧約聖書の創世記に登場する物語を描いています。ソドムとゴモラを脱出したロトが、娘たちと洞窟で暮らす場面です。娘たちは、子孫を残すためにロトに酒を飲ませ、父と関係を持ったとされています。コワペルは、この倫理的に複雑な物語を、古典主義的な様式で描いています。

La résurrection du Christ

La résurrection du Christ (1700)

La résurrection du Christ (キリストの復活)は、イエス・キリストが死からよみがえるという、キリスト教の最も重要な奇跡の一つを描いています。暗い墓の中から光に包まれたキリストが立ち上がり、それを目撃した兵士たちが驚き恐れる様子が描かれています。

Luca Giordano (1634-1705)

ルカ・ジョルダーノは、17世紀後半から18世紀初頭にかけて活躍したイタリアの画家です。特に、後期バロック様式を代表する人物であり、「速描きのルカ」という異名を持つほど、膨大な数の作品を制作しました。

彼は、スペイン人画家ホセ・デ・リベーラの工房で修業を積み、カラヴァッジョの影響を受けた劇的な明暗対比を学びました。その後、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアなどを巡り、ピエトロ・ダ・コルトーナやヴェロネーゼといったルネサンス、バロックの巨匠たちの様式を吸収しました。

彼の作風は、これらの様々な影響が融合したもので、鮮やかで豊かな色彩、躍動感あふれる構図、そして軽快な筆致が特徴です。大規模なフレスコ画から、祭壇画、肖像画まで多岐にわたる作品を手掛け、特に天井画では、建築と絵画が一体となった壮麗な空間を創り出しました。

Martyre de saint Laurent

Le Martyre de saint Laurent

Le Martyre de saint Laurent(聖ラウレンティウスの殉教)は、キリスト教の殉教者である聖ラウレンティウスが、ローマ皇帝ウァレリアヌス帝の迫害によって、生きたまま火あぶりにされるという劇的な場面を描いています。ラウレンティウスは、拷問の中でも信仰を捨てず、神への感謝を捧げたと言われています。この作品は、彼の信仰の強さと、その苦難の瞬間を捉えています。

La présentation au temple

La présentation au temple (1675-80)

La présentation au temple (神殿奉献)は、イエス・キリストの生後40日目に、両親のヨセフとマリアがエルサレムの神殿で幼子を捧げたという、新約聖書の物語を描いています。画面中央には、キリストを抱き上げる預言者シメオンと、それを見つめるマリアの姿が描かれています。

Charles de La Fosse (1636-1716)

シャルル・ド・ラ・フォッスは、17世紀後半から18世紀初頭にかけてフランスで活躍した画家です。

彼は、シャルル・ル・ブランの工房で学んだ後、ローマやヴェネツィアに滞在し、ルネサンスの巨匠たち、特にヴェネツィア派のティツィアーノやヴェロネーゼの鮮やかな色彩表現に深く感銘を受けました。

フランス帰国後、彼はヴェルサイユ宮殿などの王室装飾に携わり、ル・ブランの様式を継承しつつも、より官能的で軽快な画風を発展させました。彼の作品は、流れるような筆致と、柔らかな光、そして美しい色彩が特徴です。

ラ・フォッスは、装飾画家として高い評価を得て、王立絵画彫刻アカデミーの院長も務めました。彼の芸術は、ルイ14世時代の厳格な古典主義から、ロココ様式の優雅で装飾的な世界へと移行する過渡期において、重要な役割を果たしました。

Le Repos de Diane

Le Repos de Diane (1700)

Le Repos de Diane (ディアナの休息)は、ローマ神話の狩りの女神ディアナが、従者であるニンフたちとともに、狩りの後に休息をとっている場面を描いています。画面には、狩りの道具である弓矢や、獲物の鹿、そして猟犬が描かれ、ディアナの優雅で官能的な姿が中央に配置されています。

Jean Jouvenet (1644-1717)

ジャン・ジュヴネは、17世紀後半から18世紀初頭にかけてフランスで活躍した画家です。

彼は、画家一家に生まれ、若くしてパリに出ました。シャルル・ル・ブランの工房に入り、その影響を強く受けました。

彼の作風は、厳格な構図と力強い人物表現、そして劇的な物語性が特徴です。ルーベンスやヴェロネーゼの様式からも影響を受け、色彩も豊かに用いました。特に、宗教的な場面を、見る者の感情に強く訴えかけるような、力強いバロック様式で描くことに長けていました。

Le Triomphe de la Justice

Le Triomphe de la Justice (1713)

Le Triomphe de la Justice (正義の勝利)は、正義が不正義に打ち勝つという寓意的な主題を描いています。画面には、剣と天秤を持つ正義の女神が、不正義を象徴する混沌とした人物を打ち破り、その上に堂々と立つ姿が描かれています。この主題は、当時の王政の正当性や、法の秩序を象徴するものでした。

Franciscus Gysbrechts (1649-1676)

フランシスカス・ヘイスブレヒツは、17世紀フランドルで活躍した画家です。

彼の作風は、驚くほどリアルなトロンプ・ルイユが特徴です。額縁に入った絵画、手紙、筆記用具、カーテンなど、様々な品々が、まるでそこに実在するかのように詳細に描かれています。これらの作品は、見る者をだますことを意図しており、遠近法や光と影の巧みな表現によって、平面上の絵画に立体感を与えています。

Vanité

Vanité 

Vanité(ヴァニタス)は、死や人生の儚さをテーマとしたヴァニタス(Vanitas)というジャンルの作品です。画面には、骸骨、砂時計、消えたろうそく、泡立つシャボン玉など、時間や生命の無常を象徴する様々な品々が描かれています。これらの品々は、まるでそこに実在するかのようにリアルに描かれています。

Louis de Boullogne (1654-1733)

ルイ・ド・ブーローニュは、17世紀後半から18世紀初頭にかけてフランスで活躍した画家です。王立絵画彫刻アカデミーの主要なメンバーであり、ルイ14世とルイ15世の宮廷に仕え、フランス古典主義からロココ様式へと移行する時期を代表する芸術家の一人です。

Le Christ et L'hémorroïsse

Le Christ et L’hémorroïsse (1695)

Le Christ et L’hémorroïsse (キリストと出血の女)は、新約聖書に記されている奇跡の物語を描いています。12年間も出血の病に苦しんでいた一人の女性が、キリストの衣の端に触れるだけで病が癒やされるという場面です。この作品は、キリストの優しさと、信仰の力によって癒やされる女性の姿を、感動的に表現しています。

Pierre Domenchin de Chavane (1673-1744)

ピエール・ドメシャン・ド・シャヴァーヌは、18世紀前半にフランスで活躍した画家です。特に、フランス・アカデミーの様式を継承した肖像画家として知られています。

フランスの画家ですが、壁画で有名なシャバンヌとは別人です。

Paysage aux lavandières

Paysage aux lavandières

Paysage aux lavandières(洗濯女のいる風景)は、川辺で洗濯をする女性たち(洗濯女)を描いた、牧歌的な風景画です。緑豊かな自然の中に、遠くの街並みや、洗濯に励む人々の姿が描かれており、当時の人々の日常的な生活風景を穏やかに切り取っています。

Jean Siméon Chardin (1699-1779)

ジャン・シメオン・シャルダンは、18世紀フランスの画家です。

王立絵画彫刻アカデミーに入会後、彼は静物画で頭角を現し、特にオランダの巨匠たちから影響を受けました。

彼の作風は、華やかなロココ様式が全盛だった時代に、敢えて日常的な題材を選び、深い洞察力と繊細な筆致で描いたことです。

Pêches et raisins

Pêches et raisins (1759)

Pêches et raisins (桃とぶどう)は、テーブルの上に置かれた桃とぶどうを描いた、シンプルな静物画です。ごく普通の日常的な果物が、シャルダンの繊細な筆致と、温かみのある光によって、まるで生きているかのように生き生きと描かれています。

Le panier de prunes

Le panier de prunes (1759)

Le panier de prunes (プラムの籠)は、テーブルの上に置かれた小さな籠に盛られたプラムを描いた、静物画です。プラムの紫色の実と、籠の質感が、ごく自然な筆致で丁寧に描き込まれています。この作品は、先ほどご紹介した『桃とぶどう』と対をなすものとされています。

Charles-Joseph Natoire (1700-1777)

シャルル=ジョゼフ・ナトワールは、18世紀フランスの画家です。彼は、ルイ・ガロシュやフランソワ・ルモワーヌに師事し、ルモワーヌの助手としてヴェルサイユ宮殿の装飾にも携わりました。ローマ賞を受賞してイタリアに留学し、ルネサンスやバロックの巨匠たちから影響を受けました。

彼の作風は、師であるルモワーヌから継承した優雅で官能的なロココ様式が特徴です。明るく柔らかな色彩、軽快で流れるような筆致、そして楽しげな雰囲気が彼の作品に満ちています。特に、神話の物語を、官能的で牧歌的な場面として描くことに長けていました。

La prédication de Saint Etienne

La prédication de Saint Etienne (1745)

La prédication de Saint Etienne (聖エティエンヌの説教)は、キリスト教の最初の殉教者である聖エティエンヌ(ステファノ)が、エルサレムで説教を行っている場面を描いています。群衆が彼の言葉に耳を傾ける中、彼の背後には、彼を迫害し、後に石打ちの刑にする人々が描かれており、物語の劇的な結末を暗示しています。

Sponsored Links

まとめ

いかがでしたか?

レンヌ美術館のコレクションは、フランス絵画がたどった壮大な歴史を物語っています。ル・ブランが確立した厳格な古典主義様式から、ナトワールやコワペルが追求した優雅なロココ様式まで、それぞれの作品に込められた画家たちの個性や時代の精神を感じ取ることができたのではないでしょうか。

レンヌを訪れる機会があれば、ぜひこの美術館で、名画が織りなす感動の旅を体験してみてください。きっと、フランス美術の奥深さに魅了されることでしょう。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

レンヌ美術館に展示されいる絵画についてはこちらで詳しくご紹介させて頂いております。合わせてご参照ください。

コメント