レンヌ美術館で出会う20世紀前衛芸術の傑作|クプカ、ルオー、デュフィが切り開いた革命的表現

レンヌ美術館で出会う20世紀前衛芸術の傑作 パリから日帰り旅行
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レンヌ美術館が所蔵する20世紀前期のコレクションは、まさに「芸術史の転換点」を物語る貴重な作品群。チェコ出身のクプカが到達した純粋抽象絵画、ステンドグラス職人出身のルオーが描く人間の魂の叫び、そしてデュフィの軽やかで色彩豊かなフォーヴィスムの世界。これらの作品は、19世紀までの写実的な絵画から完全に決別し、新たな表現の可能性を切り開いた革命的な芸術なのです。

なぜ、これほど重要な前衛芸術のコレクションがレンヌに? 実は多くの前衛画家たちが、パリの喧騒を離れ、ブルターニュの自然と古い文化の中で創作活動を行っていました。この地は単なる制作地ではなく、新しい芸術を生み出すためのインスピレーションの源泉だったのです。

今回も現地で撮影した写真とともに、美術史を塗り替えた革命的な作品の数々をご紹介します。教科書では語られない、これらの傑作が持つ真の革新性と美しさを、ぜひ一緒に発見してください。

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František Kupka (1871-1957)

フランチシェク・クプカは、19世紀後半から20世紀半ばにかけて活躍したチェコの画家、版画家です。抽象絵画の創始者の一人として知られ、ワシリー・カンディンスキーやピエト・モンドリアンとともに、具象から完全に独立した新しい絵画様式を切り開きました。本人は主義に囚われることを好んでいませんでした。

Verticales et diagonales en vert

Verticales et diagonales en vert (1926)

Verticales et diagonales en vert (緑の垂直線と対角線)は、クプカが探求した純粋な抽象絵画の代表作の一つです。作品の題名が示す通り、画面は緑色を基調とした垂直線と対角線が織りなす幾何学的な構成によって成り立っており、具体的な対象物は一切描かれていません。

bleus mouvants

Bleus mouvants (1923-24)

Bleus mouvants (動く青)は、青色を基調とした、曲線や渦巻きのような形がダイナミックに配置された抽象作品です。クプカが探求した、色彩と動きの純粋な表現を象徴する作品であり、画面全体に流れるようなリズムと生命感が特徴です。

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Georges Rouault (1871-1958)

ジョルジュ・ルオーは、20世紀初頭に活躍したフランスの画家です。フォーヴィスムや表現主義の流れを汲みながら、中世のステンドグラスを思わせる独特の技法で、道化師、娼婦、キリストといったテーマを描き続けました。

キャリアの初期にはステンドグラス職人のもとで修業を積み、その後ギュスターヴ・モローのアトリエに入門。そこでアンリ・マティスらと出会いました。

Homo homini lupus

Homo homini lupus (1940-45)

Homo homini lupus (人間は人間にとって狼)は、第二次世界大戦中に制作されたもので、ルオーの人間に対する深い洞察と絶望感が表現された三連祭壇画(トリプティク)です。タイトルのラテン語「Homo homini lupus」は、「人間は人間にとって狼である」という意味を持ち、人間性の暗黒面を鋭く批判しています。

Jean-Bertrand Pégot-Ogier (1877-1915)

ジャン=ベルトラン・ペゴ=オジエは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの画家です。ブルターニュ地方の画家として知られ、後期印象派やポン=タヴェン派の影響を受けながら、独自の様式でブルターニュの風景や人々の生活を描きました。

自転車競技にも参加するサイクリストでした。

Matin de Pardon

Matin de Pardon (1913)

Matin de Pardon (パルドンの朝)は、ルターニュ地方で毎年行われる宗教的な祝祭「パルドン」の、儀式が始まる前の静かな朝の様子を描いています。伝統的な衣装を身につけた人々が、祈りを捧げるために集まる、厳粛な雰囲気が漂っています。

Femmes dans un paysage de Bretagne

Fermes dans un paysage de Bretagne (1910)

Fermes dans un paysage de Bretagne (ブルターニュの風景の中の農家)は、ブルターニュの穏やかな丘陵地帯に点在する農家や家々を描いています。ペゴ=オジエは、故郷の風景を、独自の個性的なスタイルで表現しました。この作品には、農家と自然が一体となった、ブルターニュののどかな田園風景が描かれています。

Raoul Dufy (1877-1953)

ラウル・デュフィは、20世紀に活躍したフランスの画家、デザイナーです。キャリアの初期には印象派の影響を受けましたが、1905年の「サロン・ドートンヌ」でアンリ・マティスの作品に衝撃を受け、鮮烈な色彩を用いるフォーヴィスムに傾倒しました。

Voiliers dans le port du Havre.

Voiliers dans le port du Havre (1925)

Voiliers dans le port du Havre (ル・アーヴルの港のヨット)は、デュフィの故郷であるル・アーヴルの港の賑やかな情景を描いています。港に停泊するたくさんのヨットや、活気あふれる水面の様子が、デュフィ独特の軽快なタッチで表現されています。

Vase aux bananes

Vase aux bananes (1909)

Vase aux bananes (バナナのある花瓶)は、デュフィの画業において重要な転換期に制作された静物画です。花瓶に挿された花と、その横に置かれたバナナが描かれています。この作品は、彼が鮮烈な色彩を用いるフォーヴィスムの影響を受けつつ、独自のスタイルを模索していた時期のものです。

Louis Marcoussis (1878-1941)

ルイ・マルクーシは、20世紀初頭に活躍したポーランド出身の画家、版画家です。パリでピカソやブラックらと交流し、キュビスムの中心的な芸術家の一人として独自のスタイルを確立しました。

マルクーシは、本名をルイ・マルクスといいます。ウィーンとクラクフで美術を学んだ後、1903年にパリに移住しました。そこで彼はギヨーム・アポリネールやパブロ・ピカソといった前衛的な芸術家たちと出会い、キュビスムに深く傾倒していきました。

La Gare de Kérity

La Gare de Kérity (1927) 上段

Le Port de Kérity (1927) 下段

La Gare de Kérity (ケリティー駅)は、ブルターニュ地方にあるケリティー駅の風景を、マルクーシ独特のキュビスムの技法で描いたものです。駅舎、線路、そして遠くに見える街並みが、幾何学的な形と透明感のある色彩で再構成されています。

Le Port de Kérity (ケリティー港) は、ブルターニュ地方のケリティー港の風景を、マルクーシ独特のキュビスムの技法で描いたものです。港に停泊する船、灯台、そして海と空が、幾何学的な形と透明感のある色彩で再構成されています。

Mathurin Méheut (1882-1958)

マチュラン・メウは、20世紀前半に活躍したフランスの画家、イラストレーターです。ブルターニュ地方出身で、故郷の自然、特に海の生物や漁師たちの生活を、科学的な観察眼と装飾的な感性で描き続けました。

Homme aux casiers à l'île de Sieck

Homme aux casiers à l’île de Sieck (1936)

Homme aux casiers à l’île de Sieck (シエック島のカニカゴを持つ男)は、ブルターニュ地方のシエック島で、カニカゴ(casier)を持つ漁師の姿を描いています。メウは、単に漁師の姿を写実的に描くのではなく、彼の仕事ぶりや、厳しい自然の中で生きる人々の力強い生命感を表現しています。

La mer

La mer 

La mer(海)は、ブルターニュの海の多様な表情を生き生きと描き出しています。

Charles NITSCH (1882-1972)

シャルル・ニッチは、19世紀末から20世紀にかけて活躍したフランスの画家です。特に故郷であるレンヌを拠点に活動し、ブルターニュの風景や風俗を、後期印象派やナビ派の影響を受けた装飾的なスタイルで描き続けました。

Portrait du peintre Max Meldrum

Portrait du peintre Max Meldrum (1905)

Portrait du peintre Max Meldrum (画家マックス・メルドラムの肖像)は、ニッチがパリで共に学んでいたオーストラリアの画家、マックス・メルドラムの肖像画です。ニッチがキャリアの初期に描いたこの作品は、人物の内面を真摯に探求しようとする姿勢と、当時の彼が影響を受けていた美術様式が融合しています。

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まとめ

フォーヴィスムをはじめとする20世紀前半の芸術運動を牽引した画家たちにスポットを当てました。色彩の魔術師ラウル・デュフィ、抽象絵画のパイオニアであるフランチシェク・クプカ、そしてブルターニュの風景や暮らしを独自の視点で描いた画家たち。彼らの作品は、単なる美しさだけでなく、当時の社会や画家自身の内面を映し出しています。

レンヌ美術館を訪れた際は、ぜひこの記事を片手に、20世紀フランス絵画の奥深い世界を堪能してください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

レンヌ美術館に展示されいる絵画についてはこちらで詳しくご紹介させて頂いております。合わせてご参照ください。

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