【ルーアン美術館】バロック・17世紀の傑作|ベラスケスからラ・イールまで徹底解説

【ルーアン美術館】バロック・17世紀の傑作 パリから日帰り旅行
記事内に広告が含まれています。

豪華絢爛な祝宴、静謐な宗教画、そして命がけの神話の戦い──。
ルーアン美術館のバロック・17世紀コレクションは、ヨーロッパ各国の巨匠たちが描いた物語の宝庫です。
セバスティアン・ヴランクスの華やかな祝宴、ニコラ・レニエのドラマチックな光と影、ベラスケスの知性あふれる肖像、ラ・イールの優美な宗教画…それぞれの作品が時代と文化の香りを漂わせます。
この記事では、実際にルーアン美術館で鑑賞できる名作を、画家の背景や作品の物語とともにじっくりとご紹介します。

Sponsored Links

Sebastiaen Vrancx (1573-1647)

セバスティアン・ヴランクスは、フランドル・バロック期の画家です。彼は特に戦闘場面、風景画、そして風俗画で知られています。オランダで最初の戦闘シーンを描いた画家でした。

アントワープで生まれ、生涯をこの街で過ごしました。彼はヒエロニムス・フランケンのもとで絵画を学び、後にアントワープの聖ルカ組合のメンバーとなりました。

FÊTE DANS LE JARDIN DU DUC DE MANTOUE

FÊTE DANS LE JARDIN DU DUC DE MANTOUE (1595)

『Fête dans le jardin du duc de Mantoue』(マントヴァ公爵の庭園の祝宴)は、イタリアのマントヴァ公爵の壮麗な庭園で開かれている、貴族たちの祝宴の様子を描いています。豪華な衣装をまとった人々が、音楽を奏でたり、踊ったり、会話を楽しんだりする姿が生き生きと表現されています。

Sponsored Links

Nicolas Regnier (1588-1667)

ニコラ・レニエは、フランドル出身のバロック期の画家です。彼はフランドルで修業を積んだ後、主にイタリアのローマとヴェネツィアで活躍しました。

レニエはアントワープでバルトロメウス・スプリンガーの弟子となり、その後ローマへ移りました。ローマでは、カラヴァッジョの追随者たち(カラヴァッジョ派)と交流し、その劇的な光と影のコントラスト(キアロスクーロ)、そして現実的な人物描写に強く影響を受けました。

1626年頃、レニエはヴェネツィアへ移り、そこで画風を変化させました。ヴェネツィア派の豊かな色彩と優雅さに影響され、彼の絵画はより洗練されたものとなっていきました。

レニエは画家としてだけではなく、コレクターまたは画商として財をなした。

SAINT SÉBASTIEN SOIGNÉ PAR IRÈNE

SAINT SÉBASTIEN SOIGNÉ PAR IRÈNE (1624)

『Saint Sébastien soigné par Irène』(聖イレーヌに手当てされる聖セバスティアヌス)は、キリスト教の殉教者である聖セバスティアヌスの物語を描いています。彼は矢で射られて処刑されたと思われていましたが、信仰深い女性イレーヌが彼を看病することで一命を取り留めました。この作品は、死んだと思われていたセバスティアヌスを、イレーヌと彼女の侍女たちが献身的に手当てする緊迫した場面を捉えています。

Diego Vélasquez (1599-1660)

ディエゴ・ベラスケスは、17世紀スペイン黄金時代を代表するバロックの画家でした。フランスの画家マネに「画家の中の画家」と称賛され、後の印象派の画家たちにも大きな影響を与えました。

24歳で国王フェリペ4世の宮廷画家となり、その後30年以上にわたり、国王とその家族、宮廷に仕える人々の肖像画を多数制作しました。彼は国王から絶大な信頼を得て、単なる画家にとどまらず、宮廷の要職も務めました。

DÉMOCRITE

DÉMOCRITE (1630)

『Démocrite』(デモクリトス)は、ギリシャの哲学者、デモクリトスをモデルとして描いています。

彼は、人間の愚かさや世俗の虚栄を笑い飛ばしたことから「笑う哲学者」として知られています。ベラスケスは、デモクリトスが手に地球儀を持ち、思索にふける様子を描写しており、彼の表情には知的な笑みが浮かんでいます。

フランスで保存されているベラケラスの作品は数少ないので、必見の作品です。

Laurent de La Hyre (1606-1656)

ローラン・ド・ラ・イールは、17世紀フランスのバロック期を代表する画家です。ニコラ・プッサンと並び、フランス古典主義様式の形成に大きな役割を果たしました。

彼はイタリアへは行かなかったものの、パリでイタリア美術、特にラファエロルネサンス・ヴェネツィア派の作品を研究し、自身の画風に取り入れました。

彼の作品は、プッサンの厳格な古典主義とは異なり、より柔和で優美な雰囲気を持ち、独特の詩情が漂っています。

L'ADORATION DES BERGERS

L’ADORATION DES BERGERS (1635)

『L’Adoration des bergers』(羊飼いの礼拝)は、キリストの降誕を祝うため、羊飼いたちが馬小屋の幼子イエスを礼拝する場面を描いています。ラ・イールの作品らしく、この絵は厳かで落ち着いた雰囲気を持ち、登場人物たちの敬虔な感情が静かに表現されています。

パリのマレ地区、旧王室広場(現在のヴォージュ広場)にあったカプチン教会の主祭壇のために、1635年に描かれました。フランス革命後、ルーアンに移送されました。

La Descente de Croix

La Descente de Croix (1655)

『La Descente de Croix』(十字架降下)は、イエス・キリストが十字架から降ろされる場面を描いています。悲しみに沈むマグダラのマリアや、イエスの母マリアなどが、静かにその場に立ち会っています。

この作品は、パリのノートルダム大聖堂のために描かれたもので、毎年5月に開催される展覧会「グラン・メ」に出品されました。この展覧会は、同時代のフランスの主要な画家たちが、宗教的な主題で競い合う場でした。

laurent-de-la-hyre

Saint Anne instruisant la Vierge (1630)

『Saint Anne instruisant la Vierge』(聖アンナが聖母を教える)は、聖母マリアの母である聖アンナが、幼いマリアに読み書きを教えている場面を描いています。聖母マリアの生涯を描いた物語の中でも特に敬虔な主題であり、聖アンナがマリアを信仰深く育てる様子が、穏やかで家庭的な雰囲気の中で表現されています。

PIERRE PUGET (1620-1694)

ピエール・ピュジェは、フランス・バロック期を代表する彫刻家、画家、建築家です。地中海沿岸の都市マルセイユで生まれ、イタリアで修行を積んだ後、フランスで活躍しました。

ピュジェは、しばしば「フランスのミケランジェロ」と称されることがあります。彼の作品は、当時のフランス宮廷で主流だった古典主義的な抑制された表現とは異なり、イタリア・バロックの影響を強く受けたダイナミックで劇的なスタイルが特徴です。

HERCULE TERRASSANT L'HYDRE DE LERNE

HERCULE TERRASSANT L’HYDRE DE LERNE (1659-1660)

『Hercule terrassant l’Hydre de Lerne』(レルネアのヒュドラを退治するヘラクレス)は、ギリシア神話におけるヘラクレスの「十二の功業」の一つ、レルネアの沼地に住む多頭の怪物ヒュドラとの戦いを描いています。

Gillis van Tilborgh (1625-1678)

ギリス・ファン・ティルボルヒは、フランドル・バロック期の画家です。彼は特に、当時のフランドルの農民の生活や風俗を描いたジャンル絵画で知られています。また、オランダハプスブルク家の絵画コレクションの責任者として働いていたことでも知られています。

banquet villageois

Banquet villageois (1657-59)

『Banquet villageois』(村の祝宴)は、フランドルの村の祭りの様子を描いた風俗画です。多くの人々が広場に集まり、飲食をしたり、音楽に合わせて踊ったり、談笑したりする賑やかな情景が描かれています。

Hendrik van Minderhout (1632-1696)

ヘンドリック・ファン・ミンデルハウトは、フランドル・バロック期の画家で、特に海景画や港の風景画で知られています。

ファン・ミンデルハウトはロッテルダムで生まれ、ブルージュやアントワープといった重要な港町で活動しました。彼は、海洋国家であったオランダやフランドル地方で人気のあった海景画のジャンルを専門としていました。

PAYSAGE AVEC L’ENLÈVEMENT D’EUROPE

PAYSAGE AVEC L’ENLÈVEMENT D’EUROPE (1690)

『Paysage avec l’enlèvement d’Europe』(エウロペの略奪がある風景)は、ギリシア神話の有名なエピソード「エウロペの略奪」を描いています。フェニキアの王女エウロペに恋した主神ゼウスが、白い牡牛に姿を変えて彼女を誘い、海を渡ってクレタ島へ連れ去ろうとする場面です。

Jean Baptiste Corneille (1649-1695)

ジャン=バティスト・コルネイユは、17世紀フランスの画家で、歴史画や宗教画を専門としました。

コルネイユは、画家であった父親のミシェル・コルネイユ(父)のもとで絵画を学びました。兄のミシェル・コルネイユ(子)も著名な画家でした。彼は、ルイ14世の宮廷画家シャルル・ル・ブランの弟子となり、その古典主義的な様式から大きな影響を受けました。

ローマで美術の勉強をし、フランスに帰国後は王立アカデミーの一員として活躍しました。

La Résurrection de Lazare

La Résurrection de Lazare (1694)

『La Résurrection de Lazare』(ラザロの復活)は、新約聖書のヨハネによる福音書に記されている、イエスが死後4日経ったラザロを墓から呼び出し、復活させる奇跡の場面を描いています。

Sponsored Links

まとめ

ルーアン美術館のバロック・17世紀コレクションは、単に歴史的な絵画を並べた展示ではありません。
それは、戦場の緊張、祝宴の高揚、宗教的な静けさ、そして神話の壮大さを、時を超えて体験できる「物語の劇場」です。
作品の前に立つと、絵の中の登場人物が息づき、まるで自分がその場に居合わせたかのような感覚に包まれます。ぜひ訪れた際はそんな感覚を感じてみてください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

ルーアン美術館に展示されている作品は以下の記事で詳しくご紹介させて頂いております。合わせてご参照ください。

コメント