18世紀のイタリアは、バロック期に比べるとかなり元気がなくなってしまっていて、すでに芸術の中心がフランスなどへ移ってしまっていることを感じさせられます。
バロックまではイタリアがヨーロッパ各地に絵画のスタイルを輸出していましたが、ロココ期以降は、イタリアが影響を受ける立場に変わってしまいました。
そんなイタリア絵画史の転換期でもあるロココ期について、早速詳しく見て行きましょう。
イタリア・ロココとは?:バロックの残響、ヴェネツィア派の輝き
イタリアのロココ美術は、フランスの華やかで繊細なロココ様式とは異なり、バロックの壮大さや力強さを残しつつ、より軽やかで装飾的な要素を取り入れたのが特徴です。
特にヴェネツィア派は、光と色彩の表現に優れ、祝祭的な雰囲気や日常の風景を描いた作品を数多く残しました。
- ヴェネツィア:ジョヴァンニ・バティスタ・ティエポロ、カナレット、フランチェスコ・グアルディなど、風景画や装飾画に優れた画家を輩出。
- ジェノヴァ:アレッサンドロ・マグナスコなど、独特の幻想的で風変わりな作品を制作した画家が活躍。
- ローマ:ジョヴァンニ・パオロ・パニーニなど、古代遺跡や壮大な建築物を描いた画家が人気を博した。
イタリア・ロココの時代背景:衰退とヴェネツィアの繁栄
イタリアの衰退:
- 18世紀イタリアは、政治的、経済的に衰退し、芸術の中心はフランスなどへ移りました。
ヴェネツィアの繁栄:
- ヴェネツィアは、独自の文化を維持し、ロココ美術の中心地として繁栄しました。
ナポレオンの侵攻:
- 18世紀末、ナポレオンの侵攻により、イタリアは混乱の時代を迎えました。
年表
1701年~1714年、スペイン継承戦争
1718年~1720年、四国同盟戦争
1734年、ビトントの戦い
1796年、ナポレオン1世イタリアに侵入。
1797年~1802年、ナポレオンにより、チザルピーナ共和国が設立される。
代表画家
ヴェネツィア
フランチェスコ・ルスキ(Francesco Ruschi, 1610-1661)
- バロック期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、歴史画や宗教画を制作しました。
アントニオ・ザンキ(Antonio Zanchi, 1631-1722)
- バロック期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、劇的な明暗対比(キアロスクーロ)を用いた作品で知られています。
アントニオ・モリナーリ(Antonio Molinari, 1655-1704)
- バロック期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、歴史画や宗教画を制作しました。
ジョバンニ・バティスタ・ピアツェッタ(Giovanni Battista Piazzetta, 1682-1754)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、劇的な明暗対比(キアロスクーロ)を用いた作品で知られています。
- 代表作:「羊飼いのイディル」
ヤコポ・アミゴーニ(Jacopo Amigoni, 1682-1752)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、装飾的な神話画や肖像画を制作しました。
フェデリコ・チェヴェリ(Federico Cervelli, 1625-1700)
- バロック期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、宗教画や神話画を制作しました。
セバスティアーノ・リッチ(Sebastiano Ricci, 1659-1734)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、装飾的な歴史画や宗教画を制作しました。
- 代表作:「アブラハムと三天使」
フランチェスコ・フォンテバッソ(Francesco Fontebasso, 1707-1769)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、装飾的な神話画や宗教画を制作しました。
ジョバンニ・アントニオ・ペレグリーニ(Giovanni Antonio Pellegrini, 1675-1741)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、装飾的な歴史画や神話画を制作しました。
カナレット(Giovanni Antonio Canal, 1697-1768)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ヴェネツィアの風景画家として知られ、正確な描写と明るい色彩で都市の景観を描きました。
- 代表作:「大運河」
ベルナルドベロット(Bernardo Bellotto, 1721-1780)
- ロココ期のイタリアの画家。
- カナレットの甥であり、その様式を受け継ぎ、ヨーロッパ各地の都市景観を描きました。
- 代表作:「ワルシャワの眺め」
ジョバンニ・バティスタ・ティエポロ(Giovanni Battista Tiepolo, 1696-1770)
- ロココ期のイタリアを代表する画家。
- 天井画やフレスコ画を得意とし、壮大で装飾的な作品を多く残しました。
- 代表作:「ヴュルツブルク司教館の天井画」
フランチェスコ・グアルディ(Francesco Guardi, 1712-1793)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ヴェネツィアの風景画家として知られ、自由な筆致と幻想的な雰囲気で都市の景観を描きました。
- 代表作:「サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂」
ジョバンニ・ドメニコ・ティエポロ(Giovanni Domenico Tiepolo, 1727-1804)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ジョバンニ・バティスタ・ティエポロの息子であり、父の助手として多くのフレスコ画を制作しました。
ジョバンニ・バッティスタ・ピトーニ(Giovanni Battista Pittoni, 1687-1767)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、宗教画や神話画を多く手がけました。
アントニオ・ベルッチ(Antonio Bellucci, 1654-1726)
- バロック後期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、歴史画や宗教画を制作しました。
ジョバンニ・スカハリオ(Giovanni Scajario, 1726-1792)
- ロココ期のイタリアの画家。
- 風景画家として知られています。
ジェノヴァ
ドメニコ・フィアセラ(Domenico Fiasella, 1589-1669)
- バロック期のイタリアの画家。
- ジェノヴァ派の画家であり、宗教画や歴史画を多く手がけました。
- カラヴァッジョやルーベンスの影響を受け、劇的な明暗対比(キアロスクーロ)を用いた作品で知られています。
ヴァレリオ・カステッロ(Valerio Castello, 1624-1659)
- バロック期のイタリアの画家。
- ジェノヴァ派の画家であり、宗教画、神話画、風俗画など幅広い分野で活躍しました。
- 軽快な筆致と鮮やかな色彩が特徴です。
アレッサンドロ・マグナスコ(Alessandro Magnasco, 1667-1749)
- バロック後期のイタリアの画家。
- ジェノヴァ派の画家であり、風俗画や風景画を多く手がけました。
- 独特の筆致と幻想的な雰囲気で、奇抜な作品を多く残しました。
- 代表作:「修道士のいる風景」
その他
ヴィンチェンツォ・ダンディーニ(Vincenzo Dandini, 1607-1675)
- バロック期のイタリアの画家。
- フィレンツェ派の画家であり、宗教画や肖像画を制作しました。
アントン・ドメニコ・ガビアーニ(Anton Domenico Gabbiani, 1652-1726)
- バロック期のイタリアの画家。
- フィレンツェ派の画家であり、フレスコ画や祭壇画を制作しました。
ピア・ダンディーニ(Pier Dandini, 1646-1712)
- バロック期のイタリアの画家。
- フィレンツェ派の画家であり、宗教画や神話画を制作しました。
ベネデット・ルティ(Benedetto Luti, 1666-1724)
- バロック期のイタリアの画家。
- ローマ派の画家であり、肖像画や宗教画を制作しました。
フィリッポ・マリア・ガレッティ(Filippo Maria Galletti, 1636-1714)
- バロック期のイタリアの画家。
- フィレンツェ派の画家であり、フレスコ画や祭壇画を制作しました。
ミケーレ・ロッカ(Michele Rocca, 1671-1751)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ローマ派の画家であり、神話画や風俗画を制作しました。
プラシド・コスタンツィ(Placido Costanzi, 1702-1759)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ローマ派の画家であり、フレスコ画や祭壇画を制作しました。
ジョバンニ・パオロ・パニーニ(Giovanni Paolo Panini, 1691-1765)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ローマ派の画家であり、古代ローマの遺跡や祭典の場面を描いた作品で知られています。
- 代表作:「古代ローマのギャラリー」
アントニオ・バレストラ(Antonio Balestra, 1666-1740)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、歴史画や宗教画を制作しました。
ピエトロ・ロタリ(Pietro Rotari, 1707-1762)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、宮廷画家として多くの肖像画を制作しました。
ピエトロ・ロンギ(Pietro Longhi, 1702-1785)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、ヴェネツィアの風俗画を多く手がけました。
- 代表作:「犀の見世物」
アンドレア・ロカテリ(Andrea Locatelli, 1695-1741)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ローマ派の画家であり、風景画家として知られています。
ピア・レオーネ・ゲッツィ(Pier Leone Ghezzi, 1674-1755)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ローマ派の画家であり、風刺的な肖像画やカリカチュアで知られています。
フランチェスコ・ソリメーナ(Francesco Solimena, 1657-1747)
- バロック後期のイタリアの画家。
- ナポリ派の画家であり、壮大なフレスコ画や祭壇画を制作しました。
- 代表作:「聖パオロの転向」
セバスティアーノコンカ(Sebastiano Conca, 1680-1764)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ローマ派の画家であり、宗教画や神話画を制作しました。
アンドレア・カザーリ(Andrea Casali, 1705-1784)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ローマ派の画家であり、歴史画や肖像画を制作しました。
コラード・ジャキント(Corrado Giaquinto, 1703-1766)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ローマ派の画家であり、フレスコ画や祭壇画を制作しました。
- 代表作:「聖三位一体の栄光」
アゴスティーノマスクッチ(Agostino Masucci, 1691-1758)
- ロココ期のイタリアの画家。
- ローマ派の画家であり、肖像画や宗教画を制作しました。
ゲーヴィン・ハミルトン(Gavin Hamilton, 1723-1798)
- 新古典主義のスコットランドの画家。
- ローマで活躍し、古代ローマの遺跡や歴史画を制作しました。
ポンピオ・バトーニ(Pompeo Batoni, 1708-1787)
- ロココ期から新古典主義への移行期のイタリアの画家。
- ローマで活躍し、肖像画家として人気を博しました。
- 代表作:「チャールズ・ゴードンの肖像」
フランチェスコ・マジョット(Francesco Maggiotto, 1738-1805)
- 新古典主義のイタリアの画家。
- ヴェネツィア派の画家であり、歴史画や宗教画を制作しました。
テオドロ・マッテイニ(Teodoro Matteini, 1753-1831)
- 新古典主義のイタリアの画家。
- ボローニャ派の画家であり、歴史画や肖像画を制作しました。
フランチェスコ・アイエツ(Francesco Hayez, 1791-1882)
- ロマン主義のイタリアの画家。
- 歴史画や肖像画を多く手がけ、イタリア・ロマン主義を代表する画家の一人です。
- 代表作:「口づけ」
※ 分類が違う場合もあります。
ロココ以外の画家が多く含まれています。
カタカナ表記に関して実際の発音と異なる場合もあります。
人物相関図

★ご利用の注意点★
上の代表画家の相関図です。
青い矢印は師弟関係を表していますが、実際はその関係がはっきりしていなかったり、ワークショップで働いたことがあるだけであったりします。
情報は英語版、フランス語版ウィキペディアを参考に製作しています。
まとめ
かなり多くの画家を紹介させて頂きましたが、絵画に詳しい方以外は、あまり馴染みのない画家が多かったのではないでしょうか。
ロココ期はやはりフランスの画家が中心になってしまうので、仕方ないのですが、この時期のイタリアの画家たちも沢山の素晴らしい作品を残しています。
イタリア・ロココは、バロックから新古典主義への過渡期に生まれた、独自の美意識を持つ美術様式です。
ヴェネツィア派を中心に、数々の優れた画家たちが活躍し、後世に多くの名画を残しました。
イタリアを訪れる際には、ぜひ各地の美術館や教会で、イタリア・ロココの華麗な世界を堪能してください。
イタリア・ロココまでの流れは以下になります。
- 前期ルネサンス:何故ルネサンスは起こったのか?
- 初期ルネサンス:多くの技術革新
- 盛期ルネサンス:ダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロによる完成形
- マニエリスム:新たな世界観への挑戦
- バロック・イタリア:劇的なシーンの登場
フランス・ロココは以下になります。
合わせてご参照ください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
西洋美術史の全体像は年表でご紹介させて頂いております。
合わせてご覧頂くと時代の流れが理解しやすくなると思います。
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