パリでパン屋巡りをしていると、誰もが一度は不思議に思う、パリのパン屋の違い。
パン屋さんにケーキが並んでいるのは、日本人として、何となく理解できるのですが、ケーキ屋さんにパンが並んでいるのは全く理解が出来ない方がほとんでではないでしょうか。
パン屋さんだと思って入ってみたら、クロワッサンはあるけれど、バゲットがなかったり、ケーキ屋さんだと思って入ったら、沢山のパンが並んでいたりと、不思議なことが起こります。
今回は、そんな疑問を解消すべく、ブーランジェリーとパティスリーについて詳しくご紹介させて頂きます。
ブーランジェリーとパティスリー
パリのパン屋さんについて
パリでパン屋めぐりをしていると、2つのタイプのパン屋さんに出会います。
大きく分けると以下の2つ。
- Boulangerie (ブーランジェリー)
- Pâtisserie (パティスリー)
もう少し詳しく分類することも出来ますが、ここでは簡単に分類します。
ブーランジェリーは、バゲットやPain de campagne(田舎パン)などが販売されているお店。
いわゆるパン屋さん。
パティスリーは、日本でも呼び名が浸透していますが、ケーキ屋さん。
この日本的なイメージで商品が並んでいると良いのですが、実際にはそう並んでいないところが、少々ややこしいところなのです。
パリで毎年開かれるバゲットコンクールの上位のお店に行くと、そこは間違いなくパン屋さん。
でも、ケーキも販売しているし、焼き菓子なんかもあったりします。
もちろんクロワッサンもあるし、デニッシュ類も販売されています。
そして、ケーキを購入しようと日本でも有名なお店に行くと沢山のケーキが並んでいるので、もちろんそこはケーキ屋さん。
しかし、すぐその脇にクロワッサンもあるしデニッシュもある。
お店によってはバゲットや田舎パンのようなものもある。
それぞれパンとケーキの割合が違うだけで、日本人から見るとどちらもパン屋さん。
では、その違いは一体どこにあるのか?
早速調べてみました。
Boulangerie (ブーランジェリー) とは
Boulangerie (ブーランジェリー)
日本語に訳すとパン屋さん。
そもそもブーランジェリーの語源となっているのは、boule (球体、ボール)。
そして、bouleを作る人をブーランジェリーと呼ぶようになったようです。
フランスでは現在、Boulangerieの看板を掲げるには国の許可が必要となっています。
(1998年に法律で決められました)
その基準は以下の通り。
- 生地をこねる
- 発酵させる
- 成形する
- 焼き上げる
パンを作るうえで欠かせない、この4つの行程をすべてその店舗で行い販売することが必要とされています。
つまり、冷凍の生地や、他で発酵させたり、焼いたりしたパンを店頭に並べることが出来ないということです。
もちろん、冷凍の生地等を使用してパンを作り販売してはいけないと言うことではありません。
先に挙げた条件すべてに合致しなければ、ブーランジェリーと名乗ることが出来ないということです。
ですから、フランスでは大手のチェーン店など、Boulangerieの看板のないパン屋が多数存在するのです。
またそもそもパンとは、小麦粉・水・塩・イーストと言うシンプルな材料で作られたもののことであるそうです。
Pâtisserie(パティスリー) とは
Pâtisserie (パティスリー)
日本語に訳すとケーキ屋さん。
主に小麦粉を使用し、オーブン等で焼くお菓子。
そしてそれを販売する場所。
さらにフランスやベルギーでは、免許制であり誰もがパティスリーの看板を掲げられるものではありません。
この免許取得者が、皆様良くご存知の、男性であれば、パティシエ、女性であればパティシエールと呼ばれる人たちです。
(フランスでこの資格を取得するには、かなりの期間が必要となります。)
Viennoiserie (ヴィエノワズリー)とは
それぞれのお店の違いを言葉で説明するとわかりやすいのですが、実際のお店では両方の商品が並んでいるので、区別しにくいのです。
この境界線をわかりにくくしているキーポイントとなる商品があります。
それが、Viennoiserie (ヴィエノワズリー)です。
何だか聞きなれない方もいらっしゃると思いますが、ヴィエノワズリーとは一体何でしょうか?
日本風に訳せば、ウィーンからフランスに伝わったため、ウィーン風と言う意味だそうです。
マリーアントワネットがフランスに来たときに、ウィーンよりも美味しいパンがないことを理由に、フランス全土から様々な食材を取り寄せ、競わせ、ついにウィーンよりも美味しいパンが出来たことに由来するとも言われています。
また、一般に広がり始めたのは、1837年頃、The Richelieu というパン屋がパリにオープン。
Viennoiseという言葉を店に掲げ使用し、それが広まったとも言われています。
(諸説あるので、参考程度に)
ヴィエノワズリーと言われる商品は、クロワッサンやブリオッシュなど、折り込み生地を中心に、砂糖、タマゴ、バターなどをたっぷり使って作ったパンの総称のことを言います。
このヴィエノワズリーを作るのは、本来パティシエの仕事で、ブーランジェ(パン職人)は作らなかったと言われています。
現在も全く作らないブーランジェも多くいるようです。
同じお店に並んでいても作るのは別の人、またはパティシエが作っているようです。
2つのお店の違いは?
結局2つのお店の違いとは何でしょうか?
基本的には、やはりブーランジェリーと看板を出しているお店がパン屋さんであり、パティスリーと看板を掲げているお店がケーキ屋さんと理解しましょう。
そして、パン屋にもケーキ屋にも、ヴィエノワズリーと言われるパン、(日本風で言うと菓子パン?)が販売されていると言うことです。
どちらのお店にもヴィエノワズリーが並んでいますが、実はちょっとした違いがあります。
パティシエはショコラやフルーツなどトッピングさせる素材にこだわったり、どうやったらその素材が生きてくるのかなど、見た目や食感などにこだわった作り方をすることが多いと言われています。
これはもちろんケーキ作りをベースとしているためです。
ブーランジェは、パンの素材そのものにこだわり、パンの焼き加減などに重きを置いた作り方をする。
トッピング素材にそれほどのこだわりがない場合が多いと言われています。
いわゆる職人気質の作り方です。
また価格にも違いがあり、パティスリーで販売されているヴィエノワズリーの方がやや高めに販売されているようです。
(お店によりそうでない場合もあります)
同じヴィエノワズリーを作り販売するのも、それぞれアプローチの仕方が全く違うということが、ブーランジェリーとパティスリーの違いになるようです。
まとめ
いかがでしたか?
ブーランジェリーとパティスリーの違いをご紹介させて頂きましたが、現実的には両者の違いは日々なくなって来ています。
小さなお店であれば、ブーランジェとパティシエの共同経営であったり、大きなブーランジェリーであれば、専属のパティシエが働いていたり、パティスリーに専属のブーランジェが働いていたりする場合もあるからです。
その理由として最も大きなものは、商業的な理由が要因と言われています。
フランス全土はもちろん、パリ市内には沢山のパン屋さんがあります。
また、スーパーやコンビニエンスストアの普及でどこでも安くパンやケーキを購入出来るようになっています。
そんな中で生き残っていくには、パンだけ、ケーキだけではやっていけないということがあると思います。
様々な理由で、これからもパリのパン屋、ケーキ屋は変化していくと思いますが、どちらのお店であっても本来のオーナーシェフのスタイルが基本となっています。
そんなことを意識しながらパンやケーキ、ヴィエノワズリーを食べてみれば、またパン屋めぐりの楽しさが広がると思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
こちらでパリのパン屋さんランキングをご紹介させて頂いております。
ぜひ今回の記事を参考に訪れてみてください。
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