ストラスブール近現代美術館コレクション:ドレ、シスレー、ガレ!19世紀の写実・ロマン主義・印象派・アールヌーボー

ストラスブール近現代美術館コレクション:ドレ、シスレー、ガレ!19世紀の写実・ロマン主義・印象派・アールヌーボー パリから日帰り旅行
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今回は、ストラスブール近現代美術館コレクションの中から、劇的な情景を描き出したギュスターヴ・ドレのロマン主義、光と色彩を追求したアルフレッド・シスレーの印象派、そして優美な曲線が特徴のエミール・ガレによるアール・ヌーヴォーなど、19世紀の主要な芸術運動を代表する巨匠たちの作品に焦点を当ててご紹介します。

彼らが時代を超えて私たちに語りかけるメッセージとは?さあ、美しき19世紀の世界へ、タイムスリップしてみませんか。

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Gustave Doré (1832-1883)

ギュスターヴ・ドレは、19世紀フランスを代表する多才な芸術家で、特にその力強く、劇的な挿絵(イラストレーション)で世界的に知られています。彼は画家、彫刻家としても活躍しましたが、その生涯を通じて手がけた膨大な数の本の挿絵が彼の評価を確立しました。

Le Christ quittant le prétoire

Le Christ quittant le prétoire(1867-72)

「法廷を出るキリスト」は、イエス・キリストがピラトの法廷からゴルゴタの丘での磔刑に向かう場面を描いています。ドレの宗教画の中でも特に傑作とされ、彼の持つ深い信仰心と、人間ドラマを描き出す卓越した才能が遺憾なく発揮されています。

この作品は部屋一面、高さ6m、幅9mあるとても大きな作品です。

Le Mont Sainte-Odile avec le mur païen

Le Mont Sainte-Odile avec le mur païen (1869)

「モン・サント=オディールと異教徒の壁」は、アルザス地方のヴォージュ山脈にあるモン・サント=オディール山と、その周囲を取り囲む謎に満ちた古代の石壁「異教徒の壁」(Mur Païen)が描かれています。この壁は、その起源が未だに完全には解明されていない歴史的な建造物であり、伝説や神秘に包まれています。

Le Calvaire

Le Calvaire (1877)

「ゴルゴタの丘」(Le Calvaire)は、イエス・キリストが磔刑に処せられた「ゴルゴタの丘」の情景を描いています。

画面中央には十字架にかけられたキリストの姿があり、その周囲には悲嘆に暮れる人々、兵士、そして無関心な見物人たちが入り乱れて描かれています。空は暗く重く垂れ込め、その中に一条の光が差し込むことで、この悲劇的な出来事の神聖さと、キリストの受難の重さを際立たせています。

Les Martyrs Chrétiens

Les Martyrs Chrétiens (1871)

「キリスト教の殉教者たち」(Les Martyrs Chrétiens)は、古代ローマ時代におけるキリスト教徒の迫害と殉教という、キリスト教美術において繰り返し描かれてきた主題を扱っています。ドレの宗教画の中でも特に強力な視覚的インパクトを持つ作品の一つです。

Loch Leven

Loch Leven (1878)

「ロック・レヴェン」(Loch Leven)は、スコットランドのパース・キンロス州にある美しい湖、ロック・レヴェン湖の風景を描いています。湖の広がり、遠くに見える山々、そして変化に富む空の様子が、ドレ特有のドラマチックな光と影の表現を用いて描かれています。

Soir en Alsace

Soir en Alsace (1869)

「アルザスの夕べ」(Soir en Alsace)は、故郷であるアルザス地方の風景を描いた一連の作品の一つであり、夕暮れ時のアルザスの穏やかな情景を捉えています。

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Alfred Sisley (1839-1899)

アルフレッド・シスレーは、イギリス生まれのフランスの印象派の画家です。彼は主に風景画を描き、移り変わる光や大気の効果を捉えることに長けていました。

シスレーは、印象派の中でも特に忠実にその理論を実践した画家の一人として知られています。彼の作品は、穏やかで調和の取れた色彩と、繊細な筆致が特徴です。セーヌ川やルーヴシエンヌ、モレ=シュル=ロワンなど、パリ周辺の風景を好んで描きました。

Alfred Sisley

Bords de Seine ou du Loing (1878/79)

Bords de Seine ou du Loing(セーヌ河畔あるいはロワン河畔)は、セーヌ川のほとりなのか、あるいはロワン川のほとりなのかは正確には特定されていません。シスレーは1878年から1879年にかけてマルリー=ル=ロワからセーヴルに移り住み、その後モレ=シュル=ロワンの地域に定住したため、その間のいずれかの場所が描かれたと考えられています。

Les coteaux de La Celle vus de Saint-Mammès

Les coteaux de La Celle vus de Saint-Mammès, après-midi de septembre (1884)

Les coteaux de La Celle vus de Saint-Mammès, après-midi de septembre(サン=マメから見たラ・セル丘陵、9月の午後)は、彼が晩年を過ごしたモレ=シュル=ロワンとその周辺地域で描かれた作品の一つです。

Frits Thaulow (1847-1906)

フリッツ・タウロウは、ノルウェーの著名な画家で、特に風景画、それも水辺の風景や雪景色の描写で知られています。彼はリアリズムと印象派の要素を融合させた独自のスタイルを確立しました。

Frits Thaulow

Paysage (1903) 

Paysage(風景)は、彼が晩年にフランスで制作した作品の一つです。

Jacques-Emile BLANCHE (1861-1942)

ジャック=エミール・ブランシュは、フランスの画家で、特に肖像画で大きな成功を収めました。彼はパリとロンドンの両方で活動し、当時の上流社会や文化人の肖像を数多く描きました。

ブランシュはアカデミックな教育を一部受けましたが、主に独学で絵画を習得しました。彼は18世紀のイギリスの肖像画家や、エドゥアール・マネ、ジョン・シンガー・サージェントといった画家たちのスタイルから影響を受け、独自の洗練された表現を確立しました。

Jacques-Emile BLANCHE

Jacques-Emile BLANCHE (1912)

ブランシュの自画像になります。

Le Concert

Le Concert (1910)

Le Concert(コンサート)は、彼の得意とした集合肖像画や当時の上流社会の情景を描いた作品と考えられます。ブランシュは、単に個人の肖像を描くだけでなく、サロンや音楽会、晩餐会といった社交の場に集う人々を、その場の雰囲気や人間関係を含めて描写することに長けていました。

Charles Spindler (1865-1938)

シャルル・スピンドラーは、アルザス出身の多才な芸術家です。彼は画家、寄木細工(マルケトリー)職人、作家、写真家として活躍し、特にアルザス地方の文化振興に貢献しました。

Charles Spindler

Sainte Odile sur son lit de mort (1900) 寄木細工

Sainte Odile sur son lit de mort(死の床の聖オディール)は、彼の最も特徴的な芸術形式である寄木細工(マルケトリー)で表現された作品です。

聖オディールは、アルザス地方の守護聖人であり、ホーエンブルク修道院(現在のモン・サント=オディール)の創設者として深く信仰されています。彼女はアルザス地方の歴史と文化において非常に重要な存在です。

Jules-Alexandre Grün (1868-1938)

ジュール=アレクサンドル・グリュンは、フランスの画家、イラストレーター、そして特にポスター画家として知られています。彼は19世紀末から20世紀初頭にかけてのパリの社交生活、特にキャバレーや劇場、晩餐会などの華やかな場面を描写した作品で人気を博しました。

Affiche Le tréteau de Tabarin

Affiche Le tréteau de Tabarin (1898)

Le tréteau de Tabarin(タバランの舞台)は、ベル・エポック期のパリを象徴する作品の一つです。

「タバラン」とは、17世紀の有名な喜劇役者の名前で、19世紀末のパリでは、その名を冠した人気のキャバレー「Le Tréteau de Tabarin(タバランの舞台)」が存在しました。このポスターは、まさにその賑やかなキャバレーの雰囲気を伝えるために作られました。

Théodore Deck (1823-1891)

テオドール・デッキは、19世紀フランスの著名な陶芸家であり、特にその革新的な陶器作品で知られています。彼は、伝統的な陶芸技術に加えて、イスラム陶器や東洋の陶器、特に日本の影響を強く受け、鮮やかな色彩と独特の釉薬を用いた作品を数多く制作しました。

デッキは1850年代に自身の工房を設立し、特に「デッキ・ブルー」と呼ばれる鮮やかで深みのある青色の釉薬を開発したことで有名です。これは当時、景徳鎮の青磁に匹敵する、あるいはそれを超えるものとして高く評価されました。

Théodore Deck

Émile Gallé (1846-1904)

エミール・ガレは、19世紀末から20世紀初頭にかけてフランスで活躍した、アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家、陶芸家、そして家具デザイナーです。特にガラス工芸において革命的な作品を数多く生み出し、その後のガラス芸術に多大な影響を与えました。

Émile Gallé

Vase aux orchidées (1897-98) Émile Gallé 左から

Coupe à décor de plantes aquatiques (avant 1900) Émile Gallé 

Vase vigne et escargots (1904) Antonin Daum

Vase pluie (1904) Antonin Daum

Coupe à pied a décor de cigales (1903) Émile Gallé 

Antonin Daumもアールヌーボーのガラス工芸家です。

詳しくは、ナンシー派美術館、ナンシー美術館をご覧ください。

Eugène Samuel GRASSET (1845-1917)

ウジェーヌ・サミュエル・グラッセは、スイス生まれの装飾芸術家で、フランスのベル・エポック期にパリで活躍しました。彼はアール・ヌーヴォーの先駆者の一人として広く知られています。ポスター、ブックデザイン、家具、タペストリー、陶器、宝石のデザインなど、多岐にわたる分野でその才能を発揮しました。

La Valkyrie

La Valkyrie (1893)

La Valkyrie(ワルキューレ)は、彼がアール・ヌーヴォーの代表的なポスター画家として名を馳せた時代の傑作の一つです。

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まとめ

ストラスブール近現代美術館に収蔵された19世紀の作品群は、写実主義の力強さから、ロマン主義のドラマ、印象派の繊細な光、そしてアール・ヌーヴォーの装飾的な美意識まで、多様な芸術的探求の足跡を鮮やかに示してくれます。今回ご紹介したのはそのほんの一部ですが、どの作品も当時の社会や人々の息遣いを伝える貴重なものです。

ぜひ訪れた際は、今回の記事を参考に、写真では伝えきれない作品の迫力や繊細さを、その目で直接感じてみてください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

ストラスブール近現代美術館に展示されている作品については、以下の記事で詳しくご紹介させて頂いております。合わせてご参照ください。

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