今回は、「フランス新古典主義」についてご紹介させて頂きます。
ルイ15世の時代から始まった「ロココ」は、フランス革命と共に衰退していきました。
そしてロココに変わって登場するのが、「新古典主義」になります。
「新古典主義」の台頭は、ナポレオンの登場と大きく関わっています。
それでは早速詳しく見て行きましょう。
新古典主義とは
新古典主義
ロココは非常に装飾的で、貴族主義、退廃的と考えられるようになった。
ギリシャ時代、ローマ時代の古典様式を模範としたスタイルが洗練されたものとして受け入れられるようになった。
新古典主義の始まりは、イタリアからと言われていて、1750年代から予兆が表れています。
最初の新古典主義を代表する画家は、Gavin Hamilton、Benjamin West、RaphaëlMengs、Angelica Kauffmannの4人と言われています。
フランスでは、「Joseph Marie Vien」が最初の新古典主義を代表する画家の一人であり、後にフランスアカデミーの主流のスタイルとなります。
ルイ16世の時代の建築様式は、すでに新古典主義になっていました。
ナポレオンの統治時代の芸術を、「Style Empire(アンピール様式、エンパイアスタイル)」と呼ぶこともあります。
活動期間
1760年頃~1830年頃までの期間。
ナポレオンの治世下が中心となります。
影響を与えたもの
紀元前79年、ヴェスヴィオ山の噴火により消滅した古代都市、ヘルクラネウム(Herculaneum)とポンペイ(Pompei)の発見。
ナポレオンの台頭
フランス革命後の混乱を収め、軍事独裁政権を樹立。
ナポレオン1世として、皇帝となり、ヨーロッパ各地を傘下に収めるが、最終的にイングランドを中心とする対仏大同盟軍に敗れ、イギリス領セントヘレナに流され死去する。
Style Empire(アンピール様式)と呼ばれる作品は、プロパガンダ的な役割を担っていました。
Bonaparte franchissant le Grand-Saint-Bernard (1800)
Napoleon Crossing the Alps
Jacques-Louis David (1748-1825)による作品はあまりにも有名です。
新古典主義の特徴
歴史絵画は正面から見た構図が特徴になる。
肖像画は古代の舞台がモデルになっていたり、女性の肖像画はアンティークドレスを着ていることが多い。
古代の大理石や彫刻に影響されている。
静物画は劣ったジャンルとして捉えられていたため作品が少ない。
(静物画のランクが低いのは新古典主義だけではありません。)
その他として、古代の技法を取り入れて描かれています。
出典:ウィキペディア Peinture néo-classique
年表
1738年、ヘルクラネウム(Herculaneum)の発見
1748年、ポンペイ(Pompei)の発見
1751年、「ギリシャの古代遺跡」イギリスの建築家ジェイムズ・ステュワートとニコラス・レヴェットにより出版
1755年、「ギリシャ美術模倣論」ドイツの美術史家ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマンが出版
1764年、「古代美術史」ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマンが出版
1775年~1781年、ジャック・ルイ・ダヴィットが新古典主義になる、1781年のサロンで熱狂を得る
1781年、l’école de David(ダヴィットの学校)を設立。1821年まで活動。
1785年、「ホラティウス兄弟の誓い」(ダヴィット)がパリのサロンで発表される。
1789年、フランス革命
1793年~1797年、第一次対仏大同盟(イタリア遠征)
1798年~1801年、エジプト・シリア戦役
1798年~1801年、第二次対仏大同盟
1804年、ナポレオンが皇帝に即位
1805年~1806年、第三次対仏大同盟
1806年~1807年、第四次対仏大同盟
1808年~1814年、スペイン独立戦争
1809年、第五次対仏大同盟
1812年、1812年ロシア戦役
1812年~1814年、第六次対仏大同盟
1815年、第七次対仏大同盟(百日天下)、ワーテルローの戦い
1821年、ナポレオン死去。
代表画家
ジャック・ルイ・ダヴィット(Jacques-Louis David, 1748-1825)
ジョゼフ=ブノワ・シュヴァ(Joseph-Benoit Suvee, 1743-1807)
ジャン=ジェルマン・ドルーエ(Jean-Germain Drouais, 1763-1788)
フランソワ・ジェラール(Francois Gerard, 1770-1837)
アン・ルイ・ジロデ(Anne-Louis Girodet, 1767-1824)
ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングル(Jean-Auguste Dominique Ingres, 1780-1867)
フランソワ・デヴォスゲ(FrançoisDevosge, 1732-1811)
ミシェル・マーティン・ドロリング(Michel Martin Drolling, 1786-1851)
コンスタンスメイヤー(Constance Mayer, 1775-1821)
シャルル・マリー・ブトン(Charles-Marie Bouton, 1781-1853)
フランソワ・スション(François Souchon, 1787-1857)
ジャン・アントワーヌ・グロ(Antoine-Jean Gros, 1771-1835)
アルフォンス・コーラ (Alphonse-Victor Colas, 1818-1887)
アンドレ・シャルル・ヴォイエモット(André Charles Voillemot, 1823-1893)
ジョセフ・デジレ・コート(Joseph-Désiré Court, 1797-1865)
ニコラ・トゥサン・シャーレット(Nicolas-Toussaint Charlet, 1792-1845)
ピエール・ジュール・ジョリベット(Pierre-Jules Jollivet, 1794-1871)
オクターブ・ペンギリー・ラリドン(Octave Penguilly L’Haridon, 1811-1870)
ピエール・ポール・プリュードン(Pierre-Paul Prud’on, 1758-1823)
テオドール・シャセリオー(Theodore Chasseriau,1819-1856)
イポリット・フランドリン(Hippolyte Flandrin, 1809-1864)
ポール・シェナバード(Paul Chenavard, 1807-1895)
アモリー・デュバル (Amaury Duval, 1808-1885)
ジョセフ=マリー・ヴィアン(Joseph Marie Vien, 1716-1809)
ピエール・ラクール(Pierre Lacour, 1745-1814)
フランソワ・アンドレ・ヴァンサン(Francois-Andre Vincent, 1746-1816)
ジャン・バティスト・デュブルデュー(Jean-Baptiste Dubourdieu, 1785-1864)
ホレス・ヴェルネ(Horace Vernet, 1789-1863)
ジャック・レイモンド・ブラスカサット(Jacques Raymond Brascassat, 1804-1867)
ルイ・ダゲール(Louis Daguerre, 1787-1851)
ヤン・フラン・ファンデル(Jan Frans van Dael, 1764-1840)
ルネ・ミシェル・スローツ(René-Michel Slodtz, 1705-1764)
ユベール・ロベール(Hubert Robert, 1733-1808)
ガブリエル=フランソワ・ドワイアン(Gabriel-François Doyen、1726-1806)
ピエール=アンリ・ド・ヴェラシエンヌ(Pierre-Henri de Valenciennes, 1750-1819)
ジャン・ビクター・ベルタン(Jean-Victor Bertin, 1767-1842)
ピエール・プレヴォスト(Pierre Prévost, 1764-1823)
ニコラ・アントワーヌ・タネ(Nicolas-Antoine Taunay, 1755-1830)
ジョルジュ・ミッシェル(Georges Michel, 1763-1843)
ジャン=レオン・ジェローム(Jean-Leon Gerome, 1824-1904)
ジェームス・ティソ(James Tissot, 1836-1902)
ピエール・アントワーヌ・ドマシー (Pierre-Antoine Demachy, 1723-1807)
ルイ・ガブリエル・モロー(Louis Gabriel Moreau, 1740-1806)
ジャン・バプティスト・デカン(Jean-Baptiste Descamps, 1714-1791)
ジャン・ジャック・ル・バルビエ(Jean-Jacques Le Barbier, 1738-1826)
エリーゼ・ブリュイエール(ÉliseBruyère, 1776-1847)
ギヨーム・ギヨン・レティエール(Guillaume Guillon Lethière, 1760-1832)
オクターブ・タサート(Octave Tassaert, 1800-1874)
ホレス・ルコック・デボワボードラン(Horace Lecoq de Boisbaudran, 1802-1897)
イシドール・ピルス(Isidore Pils, 1815-1875)
リュック・オリヴィエ・マーソン(Luc-Olivier Merson, 1846-1920)
エドワール・トドゥーズ(Édouard Toudouze, 1848-1907)
エティエンヌジョラット (ÉtienneJeaurat, 1699-1789)
イアサントコリン (Hyacinthe Collin de Vermont, 1693-1761)
ガブリエル・ジャック・ド・サントーバン(Gabriel Jacques de Saint-Aubin, 1724-1780)
ルイ・ジャン・フランソワ・ラグルネ(Louis-Jean-François Lagrenée, 1725-1805)
ジャン・ジャック・ラグルネ(Jean-Jacques Lagrenée, 1739-1821)
※ 分類が違う場合もあります。
新古典主義以外の画家が多く含まれています。
カタカナ表記に関して実際の発音と異なる場合もあります。
人物相関図
★ご利用の注意点★
上の代表画家の相関図です。
青い矢印は師弟関係を表していますが、実際はその関係がはっきりしていなかったり、ワークショップで働いたことがあるだけであったりします。
情報は英語版、フランス語版ウィキペディアを参考に製作しています。
まとめ
いかがでしたか。
「フランス新古典主義」の時代は、多くの画家が世に出て来たので、人物相関図も、かなり複雑になってしまいました。
代表画家に絞ってみてもこの位の数になってしまいます。
改めて相関図を見て頂くと分かるのですが、如何に「ジャック・ルイ・ダヴィット」の影響が大きかったのが伺えると思います。
(実際には、ダヴィットの学校で学んだ画家は、とても図に出来るような数ではないので、詳しく調べるとさらに複雑になって行きます。)
しかし栄華と権勢を持っていたダヴィットも、彼の人生は波乱万丈であり、ナポレオンが失脚後はブリュッセルに亡命し、生涯を終えています。
ぜひお時間のある方は、画家それぞれの人生も調べてみてください。
沢山の興味深いエピソードに出会えると思います。
次回は、「ロマン主義」についてご紹介させて頂きます。
新古典主義が広がりを見せれば見せるほど、それに対抗する考えが生まれるようになります。
フランス新古典主義までの流れは以下になります。
- 前期ルネサンス:何故ルネサンスは起こったのか?
- 初期ルネサンス:多くの技術革新
- 盛期ルネサンス:ダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロによる完成形
- マニエリスム:新たな世界観への挑戦
- 初期フランドル派:失われたもう一つの芸術
- バロック・イタリア:劇的なシーンの登場
- 古典主義・フランス:ルイ14世スタイルの誕生
- ロココ・フランス:華やかで優雅なルイ15世スタイル
新古典主義は、フランスだけでなく、イギリスにも広がっていきます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
西洋美術史の全体像は年表でご紹介させて頂いております。
合わせてご覧頂くと時代の流れが理解しやすくなると思います。
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