スペイン・バロック:黄金時代の光と影、信仰と写実の美学

スペイン バロック 西洋絵画史
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16世紀末から17世紀にかけて、スペインは「黄金時代」と呼ばれる繁栄期を迎えました。

この時代、絵画を含む様々な芸術分野で優れた才能が開花し、独自のバロック様式が確立されました。

この記事では、スペイン・バロックの特徴、時代背景、そして代表的な画家たちについて解説します。

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スペイン・バロックとは?:信仰と写実が織りなす独自の美学

バロック以前

バロック以前のスペインは、レコンキスタ(イベリア半島の再征服運動)の影響もあり、芸術自体の発展が、イタリアなどに比べて進んでいませんでした。

1492年にレコンキスタが完了した後、芸術の遅れを取り戻すべく、イタリアやフランドルから多くの技術を取り入れていきます。

1500年代には神聖ローマ帝国としてカール5世の登場、その後を継ぐフェリペ2世の治世時に、大きく芸術が開花します。

スペイン帝国最盛期の王であるフェリペ2世は芸術と文化の最大の庇護者であり、スペイン黄金時代を作り出した最大の功労者です。

スペイン・バロック

スペイン・バロックは、16世紀末から17世紀にかけてスペインで栄えた美術様式です。

カトリック教会の影響が強く、宗教画が数多く制作された一方、写実的な表現や劇的な明暗表現(テネブリズム)が特徴です。

フェリペ2世の跡を継いだ、フェリペ3世はあまり芸術に関心がなかったが、レルマ公爵がパトロンとしてスペインの芸術を支えます。

1621年に即位したフェリペ4世は、大変芸術に関心があり、この辺りから「スペイン・バロック」が花開いて行きます。

1665年にカルロス2世が即位、弱まっていた国力を回復することが出来ず、1700年に亡くなります。

黄金時代も時代に合わせて衰退して行きます。

出典:ウィキペディア スペイン黄金時代 より

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スペイン・バロックの特徴:信仰、王室、そして写実

カトリック教会からの依頼

プロテスタントによる宗教改革に対するために、カトリック教会は宗教画を依頼していました。

画家に社会的な名声を与える一方、画家には登場人物や主題等の厳密な主題が与えられていました。

王室の庇護

この時代の最大の庇護者であるフェリペ4世からの依頼が多くの画家を惹きつけました。

ルーベンスもマドリード滞在時に、芸術家を温かく迎える王室について非常に高い評価をしています。

テーマ

宗教画はもちろん、肖像画や静物画が多く描かれました。

肖像画の特徴として、社会的地位に関係なく、同じように描かれていました。

技術的特徴

  • Tenebrism(テネブリズム):劇的な照明を描くスタイルであり、カラヴァッジョの影響を強く受けています。
  • Bodegón(ボデゴン):原語であるbodegaはパントリーや居酒屋を意味する言葉です。派生語であるボデゴンは、生活の一場面を描いた作品のことを指しています。一般的にはキッチンや居酒屋の風景、花や果物などの静物を描いたものが多いです。

出典:ウィキペディア スペインバロック絵画 

スペイン・バロックの時代背景:黄金時代の光と影

レコンキスタの完了と大航海時代:

  • 1492年のレコンキスタ完了後、スペインは新大陸の発見により、広大な領土と富を獲得しました。

スペイン黄金時代:

  • 16世紀から17世紀にかけて、政治、経済、文化が発展し、スペインはヨーロッパの覇権を握りました。

カトリック教会の影響:

  • 宗教改革に対抗するため、カトリック教会は芸術を積極的に利用し、スペイン・バロック絵画の重要なテーマとなりました。

年表

1492年、レコンキスタの完了

1492年、コロンブス、アメリカ大陸発見

1516年、カール5世即位

1556年、フェリペ2世即位

1561年、マドリードに遷都

1565年、マルタ包囲戦

1571年、レバントの海戦

1584年、El Escorial(エルエスコリアス)修道院の完成

1603年、ルーベンス滞在

1621年、フェリペ4世即位

1635年~1659年、フランス・スペイン戦争

1665年、カルロス2世即位

1700年、カルロス2世死去

代表画家

エル・グレコ(El Greco, 1541-1614)

  • ルネサンス期のスペインの画家。
  • 独特の様式で宗教画や肖像画を制作し、特に細長く引き伸ばされたような人体表現が特徴です。
  • 代表作:「オルガス伯の埋葬」「受胎告知」

フアンフェルナンデス・ナバレテ (Juan Fernández Navarrete, 1526–1579)

  • マニエリスム期のスペインの画家。
  • スペイン王室の宮廷画家として活躍し、宗教画を多く手がけました。

フランチェスコリバルタ (Francesco Ribalta, 1565–1628)

  • バロック期のスペインの画家。
  • カラヴァッジョの影響を受け、劇的な明暗対比(キアロスクーロ)を用いた作品を制作しました。

ホセ・デ・リベーラ(José de Ribera, 1591-1652)

  • バロック期のスペインの画家。
  • カラヴァッジョの影響を受け、写実的で劇的な作品を制作しました。
  • 代表作:「聖イサアクの夢」「聖セバスティアヌスの殉教」

フランシスコ・コランテス(Francisco Collantes, 1599-1656)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 風景画や宗教画を制作し、特に風景画で知られています。

ルカ・ジョルダーノ(Luca Giordano, 1634-1705)

  • バロック後期のイタリアの画家。
  • ナポリ派の画家であり、多才で多作な画家として知られています。
  • ヴェネツィア派やカラヴァッジョ派など、様々な画派の影響を受け、独自の様式を確立しました。
  • 代表作:サン・マルティーノ修道院付聖堂の天井画「ユディトの勝利」

フランシスコ・パチェーコ(Francisco Pacheco del Río, 1564-1644)

  • バロック期のスペインの画家、著述家。
  • ベラスケスの師であり、その才能を見抜き、育成しました。
  • 画家としては宗教画や肖像画を制作し、著述家としては『絵画芸術』を著しました。

ディエゴ・ベラスケス(Diego Rodríguez de Silva y Velázquez,1599-1660)

  • バロック期のスペインを代表する画家。
  • 宮廷画家として肖像画や歴史画を多く手がけ、卓越した写実力と光の表現で知られています。
  • 代表作:「ラス・メニーナス」「ブレダの開城」

フランシスコ・デ・スルバラン(Francisco de Zurbarán, 1598-1664)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 宗教画を多く手がけ、静謐で神秘的な作風で知られています。
  • 代表作:「聖ボナベントゥラの幻視」「聖女アガタの幻視」

アロンソ・カーノ (Alonso Cano, 1601–1667)

  • バロック期のスペインの画家、彫刻家、建築家。
  • 多様な才能を発揮し、宗教的なテーマを中心に多くの作品を制作しました。

フアンバウティスタ・マルティネス・デル・マゾ(Juan Bautista Martínez del Mazo, 1605-1667)

  • バロック期のスペインの画家。
  • ベラスケスの娘婿であり、その様式を受け継ぎました。
  • 代表作:「ベラスケス一家の肖像」

フランシスコ・デ・ブルゴス・マンティリャ(Francisco de Burgos Mantilla, 1609-1672)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 静物画家として知られ、特に花の絵を多く手がけました。

ベニート・マヌエル・アグエロ(Benito Manuel Agüero,1624-1668)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 風景画家として知られ、マドリード周辺の風景画を多く手がけました。

フアン・サンチェス・コタン(Juan Sánchez Cotán, 1560-1627)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 静物画家として知られ、幾何学的で禁欲的な静物画を多く手がけました。
  • 代表作:「果物と野菜のある静物」

アレハンドロ・デ・ロアルテ(Alejandro de Loarte, 1590-1626)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 静物画家として知られ、市場の場面や台所の場面を描いた作品を多く残しました。

ファン・ファン・デル・ハメン(Juan van der Hamen, 1596-1631)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 静物画家として知られ、豪華な静物画を多く手がけました。
  • 代表作:「果物とガラス器のある静物」

アントニオ・ポンセ(Antonio Ponce, 1608-1677)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 静物画家として知られ、花の絵を多く手がけました。

エル・ラブラドール(Juan Fernández el Labrador, 1629-1636 活動)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 静物画家として知られ、狩りの獲物を描いた作品を多く残しました。

アントニオデルカスティーヨ(Antonio del Castillo y Saavedra, 1616-1668)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 歴史画や宗教画を多く手がけ、コルドバで活躍しました。

アントニオ・デ・ペレダ(Antonio de Pereda, 1611-1678)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 静物画、宗教画、歴史画など幅広い分野で活躍しました。
  • 代表作:「騎士の夢」

フアン・デ・アレラーノ(Juan de Arellano, 1614-1676)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 花の絵を専門とし、豪華な花束の静物画を多く手がけました。

フランシスコ・デ・パラシオ(Francisco de Palacios, 1623-1652)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 静物画家として知られ、特に台所の場面を描いた作品で知られています。

ファン・デ・ヴァルデス・リール(Juan de Valdés Leal, 1622-1690)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 宗教画や寓意画を多く手がけ、劇的で象徴的な作風で知られています。
  • 代表作:「現世の虚栄」「死の寓意」

フアン・デル・カスティーリョ (Juan del Castillo, 1590–1673)

  • バロック期のスペインの画家。
  • セビリアで活動し、ムリーリョの師としても知られています。
  • 宗教画を多く手がけました。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ(Bartolomé Esteban Perez Murillo,1617-1682)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 宗教画や風俗画を多く手がけ、特に聖母子像や子供たちの絵で知られています。
  • 代表作:「無原罪の御宿り」「幼い羊飼い」

ファン・デ・バルデス・レアール (Juan de Valdés Leal, 1622–1690)

  • 上記のファン・デ・ヴァルデス・リールと同一人物です。

イグナシオ・デ・イリアテ(Ignacio de Iriarte, 1620-1985)

  • バロック期のスペインの画家。
  • 風景画家として知られ、特に嵐の風景画を多く手がけました。

※ 分類が違う場合もあります。

バロック以外の画家が含まれている場合もあります。

カタカナ表記に関して実際の発音と異なる場合もあります。

人物相関図

西洋絵画史 スペイン黄金時代 バロック絵画 人物相関図

★ご利用の注意点★

上の代表画家の相関図です。

青い矢印は師弟関係を表していますが、実際はその関係がはっきりしていなかったり、ワークショップで働いたことがあるだけであったりします。

情報は英語版、フランス語版ウィキペディアを参考に製作しています。

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まとめ

西洋絵画に詳しい方は別として、一般の方であれば、聞きなれない画家が多かったのではないでしょうか。

私自身も最初の頃は「ベラスケス」しか知りませんでした。

しかし西洋絵画史を調べているとこの時期のスペインで描かれた作品は後の画家たちに大きな影響を与えています。

特に静物画に関しては、スペイン独自の発展をしており、見ごたえのある作品が多数ありますので、ぜひご興味のある方は色々と調べてみてください。

また、スペイン、バルセロナにご旅行の予定がある方は、ぜひプラド美術館を訪問してみてください。

世界有数の美術館の一つであり、様々な名作が展示されています。

今回ご紹介させて頂いた人物相関図も少しはお役に立てると思います。

他の国のバロック期については以下の記事をご参照ください。

なお、「バロック」以降、芸術の中心地は徐々に「フランス・パリ」へと移行していきます。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

西洋美術史の全体像は年表でご紹介させて頂いております。

合わせてご覧頂くと時代の流れが理解しやすくなると思います。

西洋絵画史
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