ロアン宮殿にある3つの美術館のうち、最もお勧めなのが、”ストラスブール美術館“。
初期イタリア絵画から、ルネサンス、マニエリスム、バロック、古典主義、自然主義を中心に1870年までの作品が展示されています。
小さい美術館ながらも見どころは沢山ありますので、ぜひお時間に余裕を持って訪れてください。
それでは早速ご紹介させて頂きます。
Musée des Beaux-Arts de Strasbourg ストラスブール美術館
Musée des Beaux-Arts de Strasbourg ストラスブール美術館
住所:2 Place du Château, 67000 Strasbourg, フランス
営業時間:
月曜日 10:00~13:00 / 14:00~18:00
水曜日~金曜日 10:00~13:00 / 14:00~18:00
土曜日・日曜日 10:00~18:00
定休日:火曜日
入場料

一般価格:7.5ユーロ
割引価格:3.5ユーロ
割引対象者:18歳以下、他に対象者あり
ミュージアム共通パス:16ユーロ(1日)、20ユーロ(3日)
歴史
1801年、ナポレオンの治世下で発令された、Chaptal令により発足する。
最初に集められた絵画は、1870年、プロイセン戦争の影響により完全に焼失してしまいます。
1890年より再び絵画を始めとする作品が収集されます。
1899年からはロアン宮殿に展示されるようになります。
その後は1947年の火災等の災難を乗り越えて、さらにコレクションを充実させています。
所要時間
館内はそれほど広くはありませんが、コレクションは充実しています。
足早に鑑賞すれば、1時間以内で見て回ることが可能です。
ゆっくり鑑賞される方は、1時間半位あれば十分だと思います。
外観

外観は”ロアン宮殿“になりますので、見ごたえのある建物です。
正面から入って一番奥、左側に入り口があります。
少し分かりにくい場所になっています。
なお、”装飾美術館“、”ストラスブール美術館“、”考古学博物館“の3つの美術館は同じ入り口になっています。

階段を上がって2階に入り口があります。
館内マップ

右側の階段の所が出入口になります。
見どころ コレクション
Giotto Di Bondone (1267-1337)
ジョット・ディ・ボンドーネは、中世後期から初期ルネサンスにかけて活躍したイタリアの画家・建築家です。
彼は、それまでのビザンティン様式の絵画が持っていた平面的で様式化された表現から脱却し、奥行きのある空間表現や、人物の感情豊かな写実的な描写を導入したことで知られています。この革新的な手法は、後のルネサンス絵画に多大な影響を与え、「西洋絵画の父」とも呼ばれています。

CRUCIFIXION(1320/25)
この作品(磔刑)は、ジョット本人への帰属が研究者の間で議論されることもありますが、一般的には彼の後期、特にペルッツィ礼拝堂やバルディ礼拝堂のフレスコ画に見られるような、ボリュームのあるドレープの表現などから、ジョットの工房または彼に強く影響を受けた画家の手によるものと考えられています。
描かれているのは、十字架にかけられたキリストを中心に、その足元には悲しみにくれるマグダラのマリアが十字架を抱きしめ、左側では失神しそうになる聖母マリアを聖女たちが囲み、右側には洗礼者ヨハネや兵士たちが描かれています。
Sandro Botticelli (1445-1510)
サンドロ・ボッティチェリは、イタリアの初期ルネサンスを代表するフィレンツェ派の画家です。
彼の作品は、優美な線描、繊細な色彩、そして詩的な主題が特徴です。特に、古代ギリシャ・ローマ神話や寓意的なテーマを扱った作品で知られ、《春(プリマヴェーラ)》や《ヴィーナスの誕生》といった傑作は、ルネサンス美術の象徴として世界中で親しまれています。

VIERGE À L’ENFANT ET DEUX ANGES
《聖母子と二人の天使》(Vierge à l’Enfant et deux anges)は、幼子イエスを抱く聖母マリアと、その両脇に立つ二人の天使を描いたものです。ボッティチェリの真作とされる類似の作品(例:ウフィツィ美術館の《マニフィカトの聖母》など)と比較すると、より簡素な構成ですが、ボッティチェリ派の絵画に共通する優美な特徴が随所に見られます。
Raffaello Santi (1483-1520)
ラファエロ・サンティは、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロとともに、盛期ルネサンスの三大巨匠の一人に数えられるイタリアの画家、建築家です。
彼の作品は、優美で調和の取れた構図、理想化された美しさ、そして明快で穏やかな表現が特徴です。特に聖母子像においては、その優しさや慈愛に満ちた表現で、後世に多大な影響を与えました。

PORTRAIT DE JEUNE FEMME
《若い女性の肖像》(Portrait de jeune femme)は、盛期ルネサンスの優美さと洗練を示す傑作です。制作年は1505年頃とされており、ラファエロがフィレンツェで活躍していた時期の作品と考えられています。この女性が誰であるかは特定されておらず、その謎めいた存在も作品の魅力の一つとなっています。
ラファエロとGiulio Romanoの2人による作品ではないかとも言われています。
Paolo Caliari dit Véronèse (1528-1588)
ヴェロネーゼ(Veronese)ことパオロ・カリアーリ(Paolo Caliari)は、ティツィアーノ、ティントレットと並び、16世紀ヴェネツィア派絵画の三大巨匠の一人に数えられるイタリアの画家です。
彼の作品は、華麗な色彩、壮大なスケール、そして豊かな装飾性が特徴です。特に、大判の祭壇画や宮殿の装飾画、祝宴の場面を描いた作品で知られています。

CÉPHALE ET PROCRIS (1580)
《ケファロスとプロクリス》(Céphale et Procris)は、オウィディウスの『変身物語』に登場する悲劇的な物語の一場面を描いています。画面の中央には、犬に喉を噛まれて瀕死の状態にある女性、プロクリスが描かれています。彼女の傍らには、過ちを悟り絶望する夫のケファロスがいます。背景には、この悲劇が起こるきっかけとなった狩猟の場面が示唆されています。
この作品は本来、プラド美術館にあるヴィーナスとアドニスと対だったようです。
Reynaud Levieux (1613-1699)
レイノー・ルヴィユーは、17世紀フランス、古典主義の画家です。彼は特に、プロヴァンス地方とローマで活動しました。1640年から1644年までローマに滞在し、ニコラ・プッサンといった当時の主要な画家たちと交流したと考えられています。

LE REPOS PENDANT LA FUITE EN ÉGYPTE (1660)
《エジプトへの逃避途上の休息》(Le Repos pendant la Fuite en Égypte)は、新約聖書に登場する「エジプトへの逃避」の物語の一場面を描いています。ヘロデ王の幼児虐殺から幼子イエスを救うため、聖母マリアと聖ヨセフがエジプトへ逃れる途中で一休みしている情景です。
Nicolas de Largillierre (1656-1746)
ニコラ・ド・ラルジリエールは、17世紀後半から18世紀前半にかけて活躍したフランスのバロックからロココの画家です。特に肖像画の分野で大きな成功を収め、アカデミー・ロワイヤル・ド・プトゥール・エ・ド・スキュルプチュール(王立絵画彫刻アカデミー)の要職も歴任しました。

LA BELLE STRASBOURGEOISE(1703)
《美しきストラスブール嬢》(La Belle Strasbourgeoise)は、ストラスブールの伝統的な衣装を身につけた若い女性を描いています。彼女は顔をやや右に向け、穏やかな微笑みをたたえながら、鑑賞者に直接視線を送っています。
Francisco de Goya y Lucientes (1746-1828)
フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテスは、18世紀後半から19世紀初頭にかけて活躍したスペインの画家です。彼は、ロマン主義の先駆者の一人とされ、西洋美術史において非常に重要な位置を占めています。
ゴヤの画業は多岐にわたり、宮廷画家として描いた肖像画では、モデルの内面まで見透かすような鋭い洞察力を示しました。また、タペストリーの下絵などの風俗画では、当時のスペインの日常や人々の暮らしを生き生きと描き出しました。

PORTRAIT DE DON BERNARDO IRIARTE (1797)
《ドン・ベルナルド・イリアーテの肖像》(Portrait de Don Bernardo Iriarte)は、ゴヤの友人であり、彼の芸術を高く評価し、支援した重要な人物であるドン・ベルナルド・デ・イリアーテ(1735-1814)を描いた肖像画です。彼は当時のスペイン社会で影響力のある人物でした。
Jean-Baptiste Camille Corot (1796-1875)
ジャン=バティスト・カミーユ・コローは、19世紀フランスを代表する画家で、特に風景画の分野で革新的な足跡を残しました。彼は、バルビゾン派の主要な画家の一人とされ、後の印象派の画家たちにも大きな影響を与えました。

L’ÉTANG DE VILLE D’AVRAY(1860)
《ヴィル=ダヴレーの池》(L’Étang de Ville-d’Avray)は、コローが頻繁に描いたお気に入りの場所である、パリ近郊のヴィル=ダヴレーにある自身の家(家族の所有地)の池の風景を描いています。
ストラスブール美術館については以下の記事もご参照ください。
- 【現地鑑賞に役立つ】ストラスブール美術館ルネサンスコレクション徹底ガイド
- ストラスブール美術館:バロックとロココが織りなす、激動の時代の光と影
- ストラスブール美術館で辿る、オランダ黄金時代の輝き:巨匠たちの傑作に迫る
- ストラスブール美術館:古典主義からロマン主義へ、激動の時代を彩る傑作群
まとめ
ラファエロやボッティチェッリ、ゴヤ、コローなど一度は聞いたことがある名前ではないでしょうか。
色々な美術館を行かれたことのある方であれば、すでに良くご存知かと思いますが、これから美術館巡りをされる方には、ぜひ覚えておいて欲しい画家ばかりです。
また、今回ご紹介しきれなかった沢山の名画は別記事でご紹介させて頂いております。
なお、曜日や時間帯にもよりますが、美術館は比較的空いていますので、ゆっくり鑑賞することが出来ます。
パリなどの有名美術館では人が多くのんびり鑑賞することが出来ないので、訪れた方は、ぜひ地方の美術館の魅力を存分に味わってみてください。
ストラスブール美術館は1870年までの作品を中心に展示されていますが、それ以降の作品は”ストラスブール近現代美術館“で展示されています。
詳しくはこちらをご覧になってください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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