今回ご紹介させて頂くのは、「アカデミック美術」です。
アカデミック美術は1563年から始まったと言われていますが、今回は、19世紀以降、フランスのアカデミック美術を中心にご紹介させて頂きます。
近年脚光を浴びている多くの画家が登場しますので、ぜひ当記事をきっかけに画家にまつわる詳しい所法を調べてみてくださいね。
なお、人物相関図に関しては、画家のつながりの関係上、時代が前後して前後の時代の画家や、分類が違う画家もご紹介させて頂いておりますことをあらかじめご了承ください。
それでは早速見て行きましょう。
アカデミック美術とは
アカデミック美術
アカデミック美術は1563年イタリア、フィレンツェにマニエリスムの画家、ジョルジョ・ヴァザーリがAccademia delle Arti del Disegno(現在のフィレンツェ美術学校)が始まりと言われています。
フランスでは、1648年にローマにあった、Accademia nazionale di San Lucaをまねて、画家、Charles Le Brun主導の下、Académie royale de peinture et de sculpture(王立絵画彫刻アカデミー)が設立されました。
1661年、ルイ14世の介入により、組織が再編されてからは、会員の間での論争が起こるようになります。
その論争は、ルーベンスとプッサンのどちらを手本にするべきかというものでした。
これはルーベンスの知性に訴える線か、プッサンの感情に訴える色か、より重要なのはどちらかというものでした。
19世紀初頭には再び、アングル(新古典主義)とドラクロワ(ロマン主義)が同様の対立を生むようになります。
19世紀後期には、この対立を統合しようとする動きが表れ、ブグローやトマ・クチュールなどが両者は同じことだという主張をし始めました。
またアカデミズムは作品のテーマによりランク付けがされるようになり、歴史画を頂点とし、風俗画、肖像画、静物画、風景画の順で評価されるようになっていました。
19世紀末から20世紀前半にかけ、社交界と結びつき、サロンには2か月で50万人の人が訪れるなど、最盛期を迎えるようになりました。
サロンが好評になればなるほど、落選する画家たちが増え、その後、サロンに認められなかった画家たちが新しい発表の場を求めて、印象派展などが開催されるようになっていきました。
出典:ウィキペディア アカデミック美術より引用
活動期間
19世紀前半から20世紀前半まで。
年表
1648年、王立絵画彫刻アカデミー 設立
1663年、アカデミーの Prix de Rome(ローマ賞)設立
1673年、Salon de peinture et de sculpture(サロン)開催
1793年、王立絵画彫刻アカデミー 解体
1816年、Académie des Beaux-Arts 設立 (王立絵画彫刻アカデミーを引き継ぐ)
1832年、サロンが毎年開催される
1845年、カバネル、ローマ賞受賞
1855年、万国博覧会(サロンと共同開催)
1863年、カバネル、「ヴィーナスの誕生」、ナポレオン3世買い上げ
1867年、万国博覧会
1870年、第3共和政(Troisième République)発足
1871年、パリコミューン
1878年、万国博覧会
1880年、Salon des artistes français(それまでのサロンを引き継ぐ)開催
1889年、万国博覧会
1900年、万国博覧会
代表画家
ルイ・エルサン(Louis Hersent, 1777-1860)
クロード・ボンヌフォン(Claude Bonnefond,1796-1860)
シャルル・グレール(Charles Gleyre, 1806-1874)
フェリックス・ジョベ・デュバル(Armand Félix Marie Jobbé-Duval, 1821-1889)
ポール・ドラローシュ(Paul Delaroche, 1797-1856)
ギュスターヴ・ブーランジェ(Gustave Boulanger, 1824-1888)
ジャン・レオン・ジェローム(Jean-Léon Gérôme, 1824-1904)
アルフォンス・ル・エナフ(Alphonse Le Hénaff 1821-1884)
トマ・クチュール(Thomas Couture, 1815-1879)
アドルフ・イヴォン(Adolphe Yvon, 1817-1893)
アーネスト・エベール(Ernest Hébert, 1817-1908)
ウィリアム・モリス・ハント(William Morris Hunt, 1824-1879)
ルイ・マリー・バーダー(Louis-Marie Baader, 1828-1920)
フェルナンド・ペレス(Fernand Pelez, 1843-1913)
ミシェル・マルタン・ドロラン(Michel Martin Drolling, 1789-1851)
シャルル・シャプラン(Charles Joshua Chaplin, 1825-1891)
ポール・ボードリー(Paul Baudry, 1828-1886)
ジャン・ジャック・エンネル(Jean-Jacques Henner, 1829-1905)
フランソワ=エドゥアール・ピコ (François-Édouard Picot, 1786-1868)
ウィリアム・ブグロー(Adolphe William Bouguereau, 1825-1905)
アレクサンドル・カバネル(Alexandre Cabanel, 1823-1889)
ウジェーヌ・フロマンタン(Eugene Fromentin, 1820-1876)
ジャン・フランソワ・ポルテール(Jean-François Portaels, 1818-1895)
フェルナン・コルモン(Fernand Cormon, 1845-1924)
T.アレクサンダー・ハリソン(Thomas Alexander Harrison, 1853-1930)
ジュール・バスティアン・ルパージュ(Jules Bastien-Lepage, 1848-1884)
ファラオン・ド・ウィンター(Pharaon de Winter, 1849-1924)
ピエール・エイドリアン・パスカル・ルウー(Pierre-Adrien-Pascal Lehoux, 1844-1896)
ベンジャミン・コンスタン(Benjamin-Constant, 1845-1902)
アンリ・ジェルベクス(Henri Gervex, 1852-1829)
エミール・レヴィ(Émile Lévy, 1826-1890)
アンリ・レオポルド・レヴィ(Henri-Léopold Lévy, 1840-1904)
アレクサンドル・ビダ (Alexandre Bida, 1813-1895)
ジャン・ポール・ローレンス(Jean-Paul Laurens, 1838-1921)
レオン・コニエ(Léon Cogniet, 1794-1880)
ピエール・デュプイ(Pierre Dupuis, 1833-1915)
アレクシス・ジョセフ・マゼロレ(Alexis-Joseph Mazerolle, 1826-1889)
ギヨーム・ドゥブフェ(Guillaume Dubufe, 1853-1909)
ジュール・ルフェーブル(Jules Lefebvre, 1834-1912)
アンドレ・デバンベス(André Devambez, 1867-1944)
エミール・ビン(Émile Bin, 1825-1897)
ジョセフ・ブラン(Joseph Blanc, 1846-1904)
フランソワ・レオン・ベヌヴィル(François Léon Benouville, 1821-1859)
トニー・ロバート・フルーリ(Tony Robert-Fleury, 1837-1911)
アレクサンドル・ルノワール(Alexandre Lenoir, 1761-1839)
オノレ・ドーミエ(Honoré Daumier, 1808-1879) リアリズム
ルイス・ラモス(Louis Lamothe, 1822-1869)
ジュール・エリー・ドローネ(Jules-Élie Delaunay, 1828-1891)
アンリ・ルノー(Henri Regnault, 1843-1871)
アルフレッド・ロール (Alfred Roll, 1846-1919)
チャールズ・コット(Charles Cottet, 1863-1925)
オーギュスト・ルルー(Auguste Leroux, 1871-1954)
マチュリン・メヒュー(Mathurin Méheut, 1882-1958)
イボンヌ・ジーン・ハッフェン(Yvonne Jean-Haffen. 1895-1993)
※ 分類が違う場合もあります。
アカデミック美術以外の画家が多く含まれています。
カタカナ表記に関して実際の発音と異なる場合もあります。
人物相関図
★ご利用の注意点★
上の代表画家の相関図です。
青い矢印は師弟関係を表していますが、実際はその関係がはっきりしていなかったり、ワークショップで働いたことがあるだけであったりします。
情報は英語版、フランス語版ウィキペディアを参考に製作しています。
まとめ
いかがでしたか。
19世紀のフランス絵画と言えば、「印象派」が高い評価を受けていますが、近年ではアカデミック美術も高い評価を受けています。
特にカバネルやブグロー、クチュールなどは時代を代表する画家の一人です。
またアカデミック美術の再評価の一端を担ったのが、「オルセー美術館」の設立になります。
オルセー美術館と言うと印象派の作品が数多く展示されているとして有名ですが、同時代のアカデミック美術の画家たちの作品も多数展示されていますので、訪れた際は、ぜひお立ち寄りください。
オルセー美術館のアカデミック美術の作品は以下で詳しくご紹介させて頂いております。
ぜひ合わせてご覧になってみてください。
次回はいよいよ画家が戸外で活動を始めます。
フランス・アカデミック美術までの流れは以下になります。
- 初期ルネサンス:多くの技術革新
- 盛期ルネサンス:ダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロによる完成形
- マニエリスム:新たな世界観への挑戦
- バロック・イタリア:劇的なシーンの登場
- 古典主義・フランス:ルイ14世スタイルの誕生
- ロココ・フランス:華やかで優雅なルイ15世スタイル
- 新古典主義・フランス:ナポレオンの台頭、アンピール様式
- 新古典主義・イギリス:産業革命と共にイギリス絵画の発展
- ロマン主義・フランス:個人の感情を重視するドラクロワの登場
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
西洋美術史の全体像は年表でご紹介させて頂いております。
合わせてご覧頂くと時代の流れが理解しやすくなると思います。
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