今回の記事では、ポンピドゥー・センターの膨大な作品の中からピカソとシャガールを中心にご紹介させて頂きます。
ピカソはブラックと共に、「キュビスム」を世に知らしめた一人です。
「キュビスム」の記事でご紹介させて頂いても良いのですが、時代によって様々なスタイルで描いているため、あえて分類せずにこちらで取り上げています。
シャガールも同様に、無理に分類すればシュルレアリスムや新原始主義などに分類することが出来るかもしれませんが、「愛の画家」と呼ばれるように、愛や結婚をテーマに描いた作品が多いため、こちらで取り上げています。
その他にも沢山の画家をご紹介させて頂いておりますが、どの画家も特定のスタイルに分類するのが難しい画家になります。
- Pablo Picasso (1881-1973)
- Amedeo Modigliani (1884-1920)
- Marc Chagall (1887-1985)
- Jean Lurçat (1892-1966)
- Pierre Klossowski (1905-2001)
- Nicolas Schöffer (1912-92)
- Nicolas de Staël (1914-1955)
- Georges Noël (1924-2010)
- Otto Piene (1928-2014)
- Christo Javacheff (1935-2020)
- Jean-Paul Chambas (1947- )
- Gary Hume (1962- )
- スルソール美術館
- まとめ
Pablo Picasso (1881-1973)
パブロ・ピカソは、20世紀を代表するスペイン出身の画家、彫刻家、版画家、陶芸家、舞台デザイナー、詩人です。
詳しく解説すると膨大な量になってしまいますので、簡潔にご紹介させて頂きます。
主な特徴:
- 多彩な才能: 絵画だけでなく、彫刻、陶芸など、幅広い分野で才能を発揮しました。
- キュビスムの創始者: ジョルジュ・ブラックとともに、革新的な美術運動「キュビスム」を創始しました。
- 生涯を通じた変革: 青の時代、バラ色の時代、キュビスムなど、生涯を通じて作風を変化させ続けました。
- 多作な芸術家: 生涯で数万点に及ぶ作品を残し、ギネスブックにも登録されています。

Buste de femme (1907)
「Buste de femme (1907)」(女性の胸像)は、ピカソの初期のキュビスムの作品として知られており、彼の芸術的な進化における重要な転換点を示しています。
作品の特徴:
- キュビスムの萌芽: この作品は、ピカソがキュビスムへと移行する過渡期に制作されたものであり、単純化された幾何学的形状と断片化された形態が特徴です。
- アフリカ美術の影響: アフリカや古代イベリア芸術の影響が強く見られ、特に女性の顔の表現にはその影響が顕著です。
- 実験的な表現: 従来の絵画の表現から脱却し、対象を複数の視点から捉え、再構築しようとするピカソの実験的な試みが現れています。上から見るのと、下から見るのとで見え方が変わる作品です。

Tête de jeune fille (1913)
「Tête de jeune fille (1913)」(若い娘の頭部)は、キュビスムの最盛期に制作されたもので、その特徴が色濃く表れています。
作品の特徴
- キュビスムの表現:
- 対象を幾何学的な形に分解し、再構築することで、複数の視点を同時に表現しています。
- コラージュの応用:
- この時期にコラージュの技法を積極的に取り入れており、この作品にもその影響が見られます。
- 絵画の中に、紙やその他の素材を貼り付けることで、新しい質感や表現を生み出しています。

Portrait de jeune fille (1914)
「Portrait de jeune fille (1914)」(若い娘の肖像)は、キュビスムの技法をさらに発展させ、総合的キュビスムへと移行していく時期に制作されました。珍しいグリーンの背景の作品です。
モデルはおそらく、「Eva Gouel」と言われています。
作品の特徴:
- キュビスムの展開:
- 対象を幾何学的な形に分解し、再構築するキュビスムの基本的な特徴は残しつつ、より装飾的で色彩豊かな表現が用いられています。
- コラージュの要素:
- この時期にコラージュの技法を積極的に取り入れており、この作品にもその影響が見られます。
- 絵画の中に、紙やその他の素材を貼り付けることで、新しい質感や表現を生み出しています。

La Liseuse (1920)
「La Liseuse (1920)」(読書する女)は、新古典主義の時代の作品であり、女性の優雅で穏やかな姿が描かれています。妻となる「オルガ・コクローヴァ」を描いた作品です。
作品の特徴:
- 新古典主義への回帰:
- 第一次世界大戦後、ピカソはキュビスムから離れ、古典的な様式への回帰を見せました。
- 女性像の表現:
- 読書をする女性の姿が、穏やかで静謐な雰囲気で描かれています。
- 女性の体は、古典的な彫刻を思わせるような、豊かで滑らかな曲線で表現されています。
- 古典的な美の追求:キュビズムの切り裂かれた様な表現とは対照的に、古典的な美を追求した作品です。

Arlequin (1923)
「アルルカン(1923年)」は、「新古典主義」の時代の作品の一つであり、ピエロの道化師であるアルルカンを描いています。ピカソの友人、「Joaquin Salvado 」が描かれていますが、衣装はピカソ自身のものが描かれています。
作品の特徴:
- 新古典主義の様式:
- 新古典主義の時代の作品であり、人物の堂々とした姿や、安定感のある構図が特徴です。
- アルルカンの表現:
- アルルカンは、ピカソが繰り返し描いたテーマの一つであり、彼の作品に頻繁に登場します。
- この作品では、アルルカンが堂々とした姿で描かれており、その表情や姿勢には、どこか憂いを帯びた雰囲気が漂っています。
- ピカソは、アルルカンに自身の姿を重ねていたという説もあります。

Nature morte à la charlotte (1924)
「Nature morte à la charlotte (1924)」(シャルロットのある静物)は、1924年に制作した静物画です。
作品の特徴:
- 総合的キュビスムの展開:
- この作品は、ピカソがキュビスムの技法をさらに発展させ、総合的キュビスムへと移行していく時期に制作されました。
- 対象を幾何学的な形に分解し、再構築するキュビスムの基本的な特徴は残しつつ、より装飾的で色彩豊かな表現が用いられています。
- 静物画の表現:
- 「シャルロット」とは、リンゴや洋ナシを使ったフランスの伝統的なデザートであり、この作品では、そのシャルロットが中心的なモチーフとして描かれています。
- 静物画でありながら、ピカソらしい大胆な構図と色彩で、日常的なモチーフを芸術的な表現へと昇華させています。

Femme au chapeau (1935)
「Femme au chapeau (1935)」(帽子を被った女)は、ピカソの妻であるオルガ・コクローヴァを描いた肖像画として知られています。
作品の特徴:
- 女性像の表現:
- ピカソの感情の動きが反映されており、オルガの顔は、ピカソの感情によって歪められています。
- 色彩と構図:
- 鮮やかな色彩と、大胆な構図が用いられています。
- 背景はシンプルであり、女性の姿が際立つように描かれています。
- 感情の表現:
- 当時のピカソとオルガの関係は悪化しており、その関係性が絵画に表れています。

La Muse (1935)
「La Muse (1935)」(ミューズ)は、ピカソの愛人であったマリー・テレーズ・ヴァルテルをモデルにした肖像画です。
作品の特徴:
- ミューズの表現:
- マリー・テレーズ・ヴァルテルは、ピカソにとって重要なミューズであり、彼の作品に頻繁に登場します。
- この作品では、彼女の穏やかで官能的な美しさが、鮮やかな色彩と曲線的なフォルムで表現されています。
- 色彩と構図:
- 鮮やかで豊かな色彩が特徴であり、特に青や黄色などの明るい色彩が多用されています。
- 曲線的なフォルムと、流れるような線描が、女性の優雅さを際立たせています。

L’Aubade (1942)
「L’Aubade (1942)」(朝の歌(セレナーデ))は占領中に描かれた作品です。
ピカソは「戦争を描いたわけではないが、当時描いた作品の中に戦争があることは疑いの余地がない」と言っています。
作品の特徴:
- 暗く、重苦しい雰囲気:
- 第二次世界大戦中に制作された作品であり、当時の社会情勢やピカソの心情が反映されています。
- 暗い色彩と、重苦しい雰囲気が特徴であり、戦争の悲惨さや不安感が表現されています。
- 女性像の表現:
- 2人の女性が描かれていますが、その姿は歪んでおり、苦悩や不安を抱えているように見えます。
- 女性の体は、幾何学的な形に分解され、再構築されており、キュビスムの特徴的な表現が用いられています。
- 象徴性:
- 「オーバード」とは、夜明けに恋人の窓の下で歌われるセレナーデのことであり、この作品では、愛や希望の象徴として描かれていると考えられます。
- しかし、その表現は暗く、重苦しいものであり、当時の社会情勢やピカソの心情が反映されています。
Amedeo Modigliani (1884-1920)
アメデオ・モディリアーニは、20世紀初頭にパリで活躍したイタリア出身の画家・彫刻家です。
等身大の人物を描くことに焦点を当てていたモディリアーニ。
当時のどのスタイルにも当てはめることが出来ない独自のスタイルで描いていました。
生涯:
- 1884年、イタリアのリヴォルノでユダヤ系の家庭に生まれました。
- 幼少期から病弱で、結核を患い、それが彼の生涯に大きな影響を与えました。
- フィレンツェやヴェネツィアで美術を学び、1906年にパリに移住しました。
- モンマルトルやモンパルナスで、ピカソや藤田嗣治など、多くの芸術家と交流しました。
- アルコールや薬物に溺れ、貧困と孤独の中で、1920年に35歳の若さで結核により亡くなりました。
作風:
- モディリアーニの作品は、細長く引き伸ばされた首、アーモンド形の顔、そして瞳のない目が特徴的な肖像画でよく知られています。
- アフリカ彫刻やキュビスム、そして自身の彫刻の経験から影響を受けた、独特の様式を生み出しました。
- 彼の描く人物は、憂いを帯びた表情と、優雅で官能的な雰囲気を漂わせています。
- 生涯に多くの裸婦画も残しており、その官能的で美しい表現は、現在も多くの人々を魅了しています。
評価:
- 生前は経済的にも評価的にも恵まれませんでしたが、死後、彼の作品は高い評価を受けるようになりました。

Gaston Modot (1918)
「ガストン・モドーの肖像」は、モディリアーニがフランスの俳優、ガストン・モドーを描いた肖像画です。
作品の特徴:
- モディリアーニ特有の、細長く引き伸ばされた人物表現が特徴的です。
- ガストン・モドーの顔は、アーモンド形の目と、細長い鼻、そして小さな口で描かれています。
- 背景はシンプルで、人物が際立つように描かれています。
- モドーの憂いを帯びた表情が印象的です。
Marc Chagall (1887-1985)
マルク・シャガールは、20世紀を代表するロシア(現在のベラルーシ)出身の画家です。鮮やかで幻想的な作風で知られ、「色彩の魔術師」とも呼ばれています。
主な特徴:
- 幻想的な世界観:
- 故郷のロシアの風景やユダヤの伝統、個人的な記憶などを融合させた、独特の幻想的な世界観を描きました。
- 空を飛ぶ恋人たちや動物、逆さまになった人物など、現実離れしたモチーフが特徴です。
- 鮮やかな色彩:
- 豊かな色彩感覚を持ち、鮮やかで幻想的な色彩を多用しました。
- その色彩は、見る人の心を惹きつけ、夢の中にいるような感覚を与えます。
- 愛と故郷への想い:
- 愛と故郷への想いをテーマにした作品を多く残しました。
- 特に、妻のベラ・ローゼンフェルトへの愛は、彼の作品の重要なモチーフとなっています。
- 多様な表現:
- 絵画だけでなく、版画、ステンドグラス、舞台美術など、幅広い分野で活躍しました。
- オペラ座の天井画や教会のステンドグラスなど、大規模な作品も手がけました。
生涯:
- 1887年、ロシア帝国領ヴィテブスク(現在のベラルーシ)で、ユダヤ系の家庭に生まれました。
- パリでキュビスムやフォービズムなどの影響を受けながら、独自の画風を確立しました。
- 第二次世界大戦中はアメリカに亡命しましたが、戦後はフランスに戻り、晩年まで精力的に創作活動を続けました。
- 1985年、97歳でフランスのサン=ポール=ド=ヴァンスで亡くなりました。

La Noce (1911-12)
「La Noce (1911-12)」(結婚式)は、初期の代表作の一つであり、故郷であるロシア(現在のベラルーシ)のユダヤ人コミュニティの結婚式を描いています。シャガールは「結婚」をテーマにした絵を数多く残しています。
作品の特徴:
- 故郷の記憶:
- シャガールの故郷であるヴィテブスクの伝統的なユダヤ人の結婚式が、彼の記憶と想像力によって描かれています。
- 登場人物や風景は、現実と幻想が混ざり合ったような、独特の世界観で表現されています。
- キュビスムの影響:
- 当時パリで流行していたキュビスムの影響が見られ、対象が幾何学的な形に分解され、再構成されています。
- しかし、シャガールはキュビスムの形式的な制約にとらわれず、独自の表現を追求しています。
- 鮮やかな色彩:
- シャガール特有の鮮やかで幻想的な色彩が用いられています。
- 色彩は、感情や記憶を表現する手段として用いられ、作品に独特の雰囲気を与えています。
- 象徴的なモチーフ:
- 空を飛ぶ人物や動物など、シャガールの作品に頻繁に登場する象徴的なモチーフが描かれています。
- これらのモチーフは、愛や幸福、故郷への郷愁などを表現していると考えられています。

Le Marchand de journaux (1914)
「Le Marchand de journaux (1914)」(新聞売り )は、シャガールの初期の作品であり、ユダヤ人の新聞配達店を描くことで、第一次世界大戦の不幸を描いています。
作品の特徴:
- キュビスムの影響:
- 新聞売りの人物や周囲の建物などが、複数の視点から描かれている点がキュビスムの特徴を示しています。
- 幻想的な要素:
- キュビスムの形式的な表現の中に、シャガール特有の幻想的な要素が加わっています。
- 人物の顔や体の表現、背景の色彩などは、現実離れした独特の雰囲気を醸し出しています。
- 都市生活の描写:
- 新聞売りという日常的なモチーフを通して、当時の都市生活の一側面を描いています。
- しかし、シャガールの手にかかると、その日常的な光景も幻想的な世界へと変貌します。

Le cimetière (1917)
「Le cimetière (1917)」(墓地)は、シャガールが故郷であるロシア(現在のベラルーシ)のヴィテブスクで描いたもので、彼の初期の作品の一つです。
作品の特徴:
- 故郷の風景:
- 墓地という場所が持つ静寂さや哀愁が、独特の色彩と構図で表現されています。
- 象徴的な表現:
- 墓地という場所を通して、生と死、記憶、郷愁といったテーマを表現しようと試みています。
- シャガール特有の象徴的なモチーフがいくつか見られます。
- 色彩と構図:
- シャガール初期の作品に見られる、やや暗く、落ち着いた色彩が特徴です。
- 構図は、墓地の静けさと、そこに漂う哀愁を強調するように構成されています。
- 個人的な感情:
- この作品は、シャガールの個人的な感情や記憶が色濃く反映されています。故郷への郷愁や、過ぎ去った時間への思いなどが表現されていると考えられています。

Bella au col blanc (1917)
「Bella au col blanc (1917)」(白い襟のベラ)、妻であるベラ・ローゼンフェルトを描いた肖像画であり、彼の初期の作品の一つです。ベラが古典的に描かれているのが特徴的です。
作品の特徴:
- 妻ベラの肖像:
- シャガールの最愛の妻であるベラ・ローゼンフェルトがモデルであり、彼女の優雅で穏やかな姿が描かれています。
- ベラの表情や姿勢には、シャガールの愛情と尊敬の念が込められていると考えられています。
- 色彩と構図:
- 落ち着いた色彩と、安定感のある構図が用いられています。
- ベラの白い襟が、作品全体のアクセントとなり、彼女の美しさを際立たせています。
- 森の下には、シャガールと娘が、妻のベラはすべてを見下ろすように、大きく、聖母に見立てて描かれています。

Les mariés de la Tour Eiffel (1938-39)
「Les mariés de la Tour Eiffel (1938-39)」(エッフェル塔の新郎新婦)(1938-39年)」は、第二次世界大戦直前に描いたもので、彼の代表作の一つです。壊れやすい幸福を描いています。
作品の特徴:
- 愛と希望の象徴:
- エッフェル塔を背景に、新郎新婦(シャガールとベラ)が抱き合う姿が描かれており、愛と希望の象徴として解釈されています。
- シャガールらしい幻想的な雰囲気の中で、二人の幸福な様子が表現されています。
- 故郷への郷愁:
- 背景には、シャガールの故郷であるヴィテブスクの風景が描かれており、彼の故郷への郷愁が感じられます。
- また、ユダヤの結婚式の要素も描かれており、彼のルーツへの思いが込められています。
- 象徴的なモチーフ:
- 雄鶏や天使など、シャガールの作品に頻繁に登場する象徴的なモチーフが描かれています。
- これらのモチーフは、豊穣や芸術、幸福などを象徴していると考えられています。
- 色彩と構図:
- シャガール特有の鮮やかで幻想的な色彩が用いられています。
- 画面全体に動きがあり、見る人の目を惹きつける構図となっています。

La Chute d’Icare (1947-77)
「La Chute d’Icare (1947-77)」(イカロスの墜落)は、晩年に手がけた大作の一つであり、ギリシャ神話のイカロスの物語を題材にしています。シャガール87歳の時の作品です。
作品の特徴:
- 神話の解釈:
- イカロスの物語を、シャガール独自の幻想的な世界観で解釈し、描いています。
- イカロスの墜落を、人間の傲慢さや悲劇としてだけでなく、自由への憧憬や芸術の象徴としても捉えています。
- 色彩と構図:
- シャガール晩年の作品に見られる、鮮やかで力強い色彩が特徴です。
- 画面全体に動きがあり、イカロスの墜落の瞬間をドラマチックに表現しています。
- 晩年の大作:
- シャガールが晩年に手がけた大作であり、彼の集大成とも言える作品です。
- 今まで描いてきた人が描かれ、イカロスの落下を眺めています。
- 長年にわたって加筆修正が繰り返され、彼の芸術的な探求心が凝縮されています。
Jean Lurçat (1892-1966)
ジャン・リュルサは、20世紀フランスのタペストリー復興に貢献した画家、陶芸家、タペストリーデザイナーです。
主な特徴:
- タペストリーの復興:
- 伝統的なタペストリー技法に革新的なデザインを取り入れ、タペストリーを現代美術の重要な表現手段として復活させました。
- アウブッソン工房との協働により、多くの傑作を生み出しました。
- 独特の図案:
- 動植物、宇宙、神話などをモチーフにした、象徴的で詩的な図案が特徴です。
- 鮮やかな色彩と大胆な構図で、見る人を魅了するタペストリーを制作しました。
- 社会的なメッセージ:
- 第二次世界大戦後には、平和や自由をテーマにした作品を多く制作し、社会的なメッセージを発信しました。

Portrait d’Annie Dalsace (1923)
「Portrait d’Annie Dalsace (1923)」(アニー・ダルサックの肖像)(1923年)」は、リュルサが初期に描いた肖像画であり、彼の妻であるアニー・ダルサックを描いています。
作品の特徴:
- 妻の肖像:
- アニーの表情や姿勢には、リュルサの愛情と尊敬の念が込められていると考えられます。
- 色彩と構図:
- 落ち着いた色彩と、安定感のある構図が用いられています。
- アニーの服装や背景には、当時の流行やリュルサの趣味が反映されています。
- 初期の作風:
- この作品は、タペストリー制作に転向する前に描かれたものであり、彼の初期の作風を知る上で貴重な資料となります。
- 写実的な描写の中に、独特の装飾的な要素が垣間見えます。
Pierre Klossowski (1905-2001)
ピエール・クロソウスキーは、20世紀フランスの作家、画家、思想家です。
前半生は小説家として活動していましたが、後半生は画家として活動していました。マルキ・ド・サドやニーチェの研究家としても知られています。

Descente au sous-sol (1978)
「Descente au sous-sol (1978)(地下への降下)は、晩年に描いた絵画作品であり、彼の独特な世界観と、人間の欲望や性をテーマにした作品として知られています。
地下という閉鎖的な空間で繰り広げられる、人間の欲望や倒錯した感情が描かれています。
Nicolas Schöffer (1912-92)
ニコラス・シェフェールは、ハンガリー生まれのフランスの彫刻家、キネティック・アート(動く彫刻)の先駆者です。
主な特徴:
- キネティック・アートの先駆者:
- 光、動き、空間を組み合わせた、ダイナミックで革新的な彫刻作品を制作しました。
- サイバネティック・アートやビデオアートなど、新しいメディアを積極的に取り入れました。
- サイバネティック彫刻:
- コンピューター制御による自動的に動く彫刻「サイバネティック彫刻」を制作し、芸術とテクノロジーの融合を試みました。
- 代表作である「CYSP 1」は、光と動きを組み合わせたサイバネティック彫刻の傑作として知られています。
- 都市計画への関与:
- 彫刻作品だけでなく、都市計画にも関心を持ち、光と動きを取り入れた未来的な都市空間を提案しました。

Spatioplastiques 6 (1950)
この作品は、シェフェールが提唱した「空間彫刻(Spatiodynamisme)」の概念を具体化したもので、絵画と彫刻の境界を曖昧にする試みとして制作されました。
立体的な要素が光を反射し、多様な影を生み出すことで、作品に動きと深みを与えています。

Composition spatiodynamique (1948-49)
「Spatioplastiques 6 」と同様に、絵画と彫刻の境界を曖昧にする試みとして制作されました。
光と影の効果を最大限に引き出すために、慎重に配置されています。

Spatiodynamique 22 (1954)
従来の彫刻が持つ静的な性質を否定し、動きや光を取り入れたダイナミックな作品を追求しました。

(1951)
Nicolas de Staël (1914-1955)
ニコラ・ド・スタールは、20世紀フランスで活躍したロシア出身の画家です。抽象絵画から出発し、独自の具象絵画へと至った画家として知られています。セザンヌ、ゴッホ、ブラックやルーベンス、フェルメールなどから影響を受け、多彩な画風で作品を描いていました。
特定のスタイルに属することをひどく嫌っていました。
主な特徴:
- 独特の画風:
- 厚塗りの絵具と、鮮やかな色彩、そして力強い筆致が特徴です。
- 抽象と具象の境界を曖昧にするような、独特の画風を確立しました。
- 色彩の魔術師:
- 色彩の魔術師とも呼ばれるほど、色彩感覚に優れていました。
- 鮮やかな色彩を組み合わせ、光と影の効果を巧みに表現しました。

Les Toits (1952)
「Les Toits (1952)」(屋根)は、ド・スタールが独自の具象絵画のスタイルを確立した時期に制作されたもので、彼の代表作の一つとして知られています。
作品の特徴:
- 都市風景の表現:
- この作品は、パリの屋根の風景を描いたものです。日常的な風景の中に、独自の美を見出し、それを力強い筆致と鮮やかな色彩で表現しました。
- 抽象と具象の融合:
- 屋根の形は単純化され、幾何学的な形として描かれていますが、同時に、都市の雰囲気や光の表現も豊かに感じられます。
Georges Noël (1924-2010)
ジョルジュ・ノエルは、20世紀後半にフランスで活躍した画家です。
主な特徴:
- 独特の絵画技法:
- ノエルは、伝統的な絵画技法にとらわれず、壁のひび割れや古代の碑文から着想を得た独特の絵画技法を開発しました。
- 「パストグリフ」と呼ばれる技法は、絵具と砂や石膏などを混ぜ合わせた素材を何層にも重ね、それを引っ掻いたり削ったりすることで、複雑なテクスチャーを生み出します。
- 古代の象徴性:
- ノエルの作品には、古代の象徴性や神話的な要素が色濃く表れています。

Grand palimpseste jaune (1960)
「Grand palimpseste jaune (1920)」(大いなる黄色のパリンプセスト)は、代表的な作品の一つであり、彼の独特な絵画技法である「パストグリフ」が用いられています。
作品の特徴:
絵具や砂などの物質的な素材が、古代の記憶や人間の精神性を表現する媒体として用いられています。物質的な質感と精神的な深みが融合した作品です。
古代の象徴性:
作品には、古代の碑文や壁画を思わせる記号や模様が描かれています。黄色を基調とした色彩と、複雑なテクスチャーが、時間や空間を超えた普遍的なイメージを喚起します。
Otto Piene (1928-2014)
オットー・ピエネは、ドイツ出身の芸術家で、特に光と動きを追求した作品で知られています。彼は、20世紀後半の芸術界に大きな影響を与えた「グループ・ゼロ」の創設メンバーの一人です。
主な特徴:
- 光と動きの探求:
- ピエネは、光と動きを芸術の重要な要素として捉え、それらを組み合わせることで、新しい視覚体験を生み出しました。
- 「光のバレエ」と呼ばれる光のインスタレーションや、空に巨大なバルーンを浮かべる「スカイ・アート」などの作品で知られています。
- グループ・ゼロの創設:
- 1950年代後半、ハインツ・マックと共に「グループ・ゼロ」を結成し、従来の絵画の概念を否定し、光、動き、空間を重視した新しい芸術を提唱しました。
- スカイ・アート:
- 空に巨大なバルーンを浮かべる「スカイ・アート」は、彼の代表的な作品の一つです。これは、芸術を美術館から解放し、人々の日常生活の中に持ち込む試みでした。
- 多様な表現:
- 絵画、彫刻、インスタレーション、パフォーマンスなど、多様な表現方法を用いました。
- また、テクノロジーを積極的に取り入れ、新しい芸術の可能性を追求しました。

La force pure III (1959)
「La force pure III (1959)」(純粋な力 III)は、ピエネが「グループ・ゼロ」の活動を通して、光と動きを追求していた時期に制作されました。
Christo Javacheff (1935-2020)
ブルガリアで生まれたChristo Javacheffですが、1950年代パリでモロッコ出身のJeanne-Claude Denat de Guillebon(1935-2009)と出会い結婚します。
その後の活動は「Christo and Jeanne-Claude」としてクレジットされています。世界各地で数々のプロジェクトを実現しました。
主な特徴:
- 大規模な梱包とインスタレーション:
- 建造物や自然環境を布で覆う大規模なインスタレーションで知られています。
- 梱包された建造物や風景は、一時的にその姿を変え、見る人に新たな視点を与えます。
- 一時性と儚さ:
- プロジェクトは、一時的なものであり、儚い美しさを持ちます。
- プロジェクトの記録は、写真や映像などで残されますが、その実物は短期間で撤去されます。
- 環境への配慮:
- プロジェクトの実施にあたっては、環境への影響を最小限に抑えるよう配慮されています。
- 使用される素材はリサイクル可能であり、プロジェクト終了後には完全に撤去されます。

Four Store Fronts Corner, Project (1964-65)
「Four Store Fronts Corner, Project (1964-65)」は、都市空間における店舗のファサード(正面)を梱包するというプロジェクトです。
梱包によって、店舗の形状や色彩が変化し、見る人に新たな視覚体験をもたらします。 同時に、日常的な空間に対する私たちの認識や、消費社会に対する問いかけを投げかけます。
Jean-Paul Chambas (1947- )
ジャン・ポール・シャンバスはフランスの現代画家になります。
歴史的な出来事や神話を題材にした作品を多く制作していますが、従来の歴史画とは異なり、現代的な視点や解釈を取り入れています。舞台美術の経験から、作品には演劇的な要素が強く表れています。

Nefertari as Lautrec (1979)
この作品は、古代エジプトの王妃ネフェルタリを、19世紀末のフランスの画家アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックのスタイルで描いた、シャンバスの独特な歴史解釈と芸術的融合を示す作品です。
Gary Hume (1962- )
ゲイリー・ヒュームは、1962年イギリス生まれの画家であり、ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)の一人として知られています。ステラマッカトニーやマルニなどのブランドとコラボレーションをしています。
主な特徴:
- 独特の絵画スタイル:
- 高光沢の工業用塗料を使用し、日常的なものをテーマに描く作品で知られています。
- 鮮やかな色調、縮小されたイメージ、シンプルで柔らかな画面構成が特徴です。
- 初期の作品:
- 初期の作品には、「door paintings」と呼ばれる、ドアに等身大で描かれた絵画シリーズがあります。
- YBAsの一員:
- ダミアン・ハーストが主催した展覧会「Freeze」展に出展し、YBAsの一員として注目を集めました。
- 現代美術への貢献:
- ゲイリー・ヒュームの作品は、現代美術において独特な位置を占めており、その鮮やかでシンプルなスタイルは、多くの人々に影響を与えています。

The Moon (1962)
高光沢の工業用塗料を使用することで、独特の質感と鮮やかな色彩を生み出しています。月の光沢や質感が表現されています。
スルソール美術館
スルソール美術館(Musée Soulages)は、フランスのアヴェロン県ロデーズにある美術館です。
世界的に有名な画家、ピエール・スルソール(Pierre Soulages)の作品を専門に展示しています。
Cici Tommaseo Sursock (1923-2015)

Portrait of Odile Mazloum (1964)
クロアチア系レバノン人の画家である「Cici」のこの作品は、2020年8月に起きたベイルートの爆発で大きな損傷を受けました。
ポンピドゥー・センターなどが含まれる、国際芸術コミュニティにより、2年半の歳月をかけ修復されました。
2023年の5月に再開されるスルソール美術館に返却されるまで、ポンピドゥー・センターに飾られていました。
Paul Guiragossian (1926-1993)
ポール・ギラゴシアンは、レバノンで活躍したアルメニア系画家です。
レバノンの現代美術を牽引した画家の一人として知られています。

Untitled (1970)
ギラゴシアンの独特な人物表現と鮮やかな色彩が特徴的な作品であり、彼の代表作の一つとして知られています。
まとめ
ピカソとシャガールを中心にご紹介させて頂きました。
スタイルの違う二人の画家ですが、面白いことに、実は共通点があるのです。
それは、「フランスに定住した最も有名な画家」の二人なのです。
(ピカソはご存知の通り、スペイン出身であり、シャガールは、ロシア出身の画家になります。)
ただし、ほぼ同時代を生きた二人ですが、積極的な交流はほとんどなかったようです。
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
ポンピドゥー・センターの他のコレクションは以下の記事でご紹介させて頂いております。
合わせてご参照ください。
ポンピドゥー・センターにつていの概要は以下の記事で詳しくご紹介させて頂いております。
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