フランスで、フォーヴィスム、キュビスムが絵画の中心になっていた頃、ドイツでは「表現主義」が、イタリアでは「未来派」、ロシアでは「ダイヤのジャック」、「構成主義」などが誕生していました。
国によって呼び名は違いますが、流れとして共通しているのは、次第に作品は画家の内面を表現していくようになります。
German Expressionism ドイツ表現主義
Alexej von Jawlensky (1865-1941)
Byzantinerin (Helle Lippen) (Byzantine (Lèvres pâles)) (1913)
アレクセイ・フォン・ヤウレンスキーは、ゴッホやゴーギャンの影響を受けています。
カンディンスキーやマティスからも大きな影響を受けた、ドイツ表現主義を代表する画家の一人です。
Ernst Ludwig Kirchner (1880-1938)
Toilette – Frau vor dem Spiegel (La toilette – Femme au miroir) (1920)
ドイツ表現主義を代表する画家の一人です。
青を中心とした背景に、歪んだ遠近法、モデルのポーズが鏡に映ったものと違うなど様々な手法を取り入れて描かれています。
Liebespaar (Les Amoureux) (1921 – 23)
非常にシンプルな構図で描かれています。
Max Pechstein (1881-1955)
In den Dünen (Dans les dunes) (1911)
ドイツ表現主義、ブリュッケを代表するメンバーの一人です。
ゴーギャンを思わせるような作品です。
New Objectivity 新即物主義
Otto Dix (1891-1969)
Erinnerungen an die Spiegelsäle von Brüssel
(Souvenirs de la galerie des glaces à Bruxelles)
(1920)
オットー・ディクスは、新即物主義に属する画家です。
新即物主義は、表現主義に反するもので、社会の中の無名・匿名として存在している人間に冷徹的な視線で即物的に表現する運動のことになります。
ナチスの台頭により、退廃芸術として運動は衰退していきます。
Der blaue Reiter 青騎士
Vassily Kandinsky (1866-1944)
Improvisation 3 (1909)
チュニスの街の橋を、馬と騎手が上に向かって進んでいます。
騎手は聖ジョージ(自分自身)をイメージしています。
Impression V (Parc) (1911)
Mit dem schwarzen Bogen (Avec l’arc noir) (1912)
衝突する3つの大陸をロシアの伝統的な馬具である「ドゥーガ」にインスピレーションを得た黒い弓によって緊張状態を保っています。
Bild mit rotem Fleck (Tableau à la tache rouge) (1914)
Im Grau (Dans le gris) (1919)
ロシア時代最後の作品の一つです。
Auf Weiss II (Sur blanc II) (1923)
バウハウス時代のアパートのダイニングに飾られていた作品になります。
Akzent in Rosa (Accent en rose) (1926)
バウハウス時代の作品になります。
Auf Spitzen (Sur les pointes) (1928)
1926年に出版された「Point and Line to Plane(平面上の点と線)」の図法に基づいて描かれています。
Deux points verts (1935)
Bleu de ciel (1940)
占領下、ヌイイ=シュル=セーヌのアパートで描かれた作品です。
Accord réciproque (1942)
カンディンスキー、最後から2番目の作品になります。
色と音をキャンパスに描く集大成と呼べる作品になっています。
Lyonel Feininger (1871-1956)
Am Strande (Sur la plage) (1913)
青騎士のメンバーであり、バウハウスで教鞭をとっていました。
ドイツ系のアメリカ人画家になります。
作品は初期の頃のものであり、キュビスムや表現主義などが組み合わされて描かれています。
Liebespaar (Les amoureux) (1916)
Marine (1924)
作品は貨物船やヨットが描かれています。
リオネル・ファイニンガーは「海」をテーマにした作品を多く描いています。
Gabriele Münter (1877-1962)
Drachenkampf (Combat du dragon) (1913)
カンディンスキーのパートナーとして知られている「ガブリエレ・ミュンター」。
「青騎士」のメンバーでもあり、最後までそのスタイルを残していました。
ドラゴンと聖ジョージの戦いは、芸術のビジョンを押し付けるアカデミズムへの反発の象徴として描かれています。
Paul Klee (1879-1940)
Florentinisches Villen Viertel (Villas florentines) (1926)
「青騎士」のメンバーである、パウル・クレー。
この作品は、フィレンツェの景観をパッチワークで表現しています。
Rhythmisches (En rythme) (1930)
絵画的な性質を持ちつつ、作曲のコードを取り入れています。
August Macke (1887-1914)
Frauenkopf in Orange und Braun (Tête de femme orange et marron) (1911)
カンディンスキーやマルクらと共に、「青騎士」に参加したアウグスト・マッケ。
キュビスムやフォーヴィスムの影響も受けていて多彩な作品を描きました。
残念ながら第一次世界大戦に参加したことにより、27歳の若さで亡くなっています。
Lautenspielerin (Joueuse de luth) (1910)
1911年、第1回青騎士展に出品された作品です。
Bauhaus バウハウス
Laszlo Moholy-Nagy (1895-1946)
Composition A.XX (1924)
1919年から1928年まで、バウハウスで教鞭をとった「モホリ=ナジ・ラースロー」。
第2次世界大戦中にアメリカに亡命し、「ニューバウハウス」を設立するなど、デザインの分野で大きな貢献をしています。
また、写真や、美術の教育本を出版するなど様々な分野で活躍しました。
Futurismo イタリア未来派
Gino Severini (1883-1966)
La danse de l’ours au Moulin Rouge (1913)
主義で分類すると「イタリア未来派」に属するセヴェリーニ。
「ムーランルージュでのくまの踊り」をテーマに描いた作品です。
動き(踊り)だけでなく、音楽や匂いなどあらゆるものを表現しています。
Félix Del Marle (1889-1952)
Composition (1947)
フランスの画家であり、未来派や新造形主義、「Salon des Réalités Nouvelles」などのメンバーとして活動していました。
Jack of Diamonds & Donkey’s Tail
Mikhail F. Larionov (1881-1964)
L’automne (1912)
ロシア・アヴァンギャルドを代表する画家、ミハイル・ラリオーノフ。
「ダイヤのジャック」や「ロバの尻尾」など、芸術集団を結成していました。
Le printemps (1912)
ヴィーナス、または異教の女神をパロディとして描くことで、ロシアの体制を侮辱することをためらわない創造の自由を表明しています。
Paysage (1912)
Portrait de V.E. Tatline (1913)
ロシアの芸術家、VE タトリンをキュビスム的な手法で描いています。
嘲笑する暗示が含まれています。
Natalia Gontcharova (1881-1962)
Les lutteurs (1909-10)
ラリオーノフの妻である、ナタリア・ゴンチャロワ。
ゴーギャンの影響を強く受けています。
Nature morte au homard (1909-1910)
Pieds foulant le raisin (1911)
ブドウを踏む足の動きを見事に表現しています。
Le Paon (1911)
孔雀は、不死の象徴として描かれています。
Les ivrognes (1911)
Dame au chapeau (1913)
キュビスムの手法を取り入れつつ、イタリア未来派の影響も強く受けています。
Constructivism ロシア構成主義
Antoine Pevsner (1884-1962)
Femme déguisée (1913)
アントワーヌ・ペヴスナーは、ロシア構成主義の命名者の一人と言われています。
この作品のタイトルは「変装した女性」であり、キュビスムの影響を受けています。
まとめ
今回ご紹介させて頂いた中では、「カンディンスキー」が最も多くの画家に影響を与えています。
抽象画の創始者の一人と言われているカンディンスキーは、ロシア生まれということもあり、時代に翻弄され続けます。
しかし時代に翻弄された続けたからこそ、素晴らしい作品が製作され、その経験が時代へと引き継がれていったのかも知れません。
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
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